こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
2023年9月、参天製薬が早期退職者の募集(=リストラ)を行うと発表しました。
参天製薬と言えば、眼科領域でメチャクチャ強い製薬会社ですよね。
点眼薬と言えば真っ先に参天製薬の名前が挙がるほど、眼科市場では高いシェアを誇っています。
代表的な製品としては、クラビット点眼液などが有名でしょうか。
昔、筆者がMSとして働いていた頃はクラビット点眼液を幾度となく【詰め】ました…(汗)
そんな参天製薬ですが、まさかの電撃的なリストラ告知を行いました。
参天製薬のような特定の領域に特化しているメーカーって、個人的にはリストラをやらないイメージを持っていたのですが、これも時代の流れなんですかね。
【参天製薬のホームページ】や【ミクスオンラインの記事】を確認したところ、リストラの概要としては以下の通りです。
・募集人数:設定なし
・募集期間:2023年10月2日~2023年10月31日
・退職日:2023年12月31日
・割増の退職金:あり
・再就職の支援:あり
リストラの内容を見てみると、ごく普通の早期退職という感じですね。
具体的な金額は不明ですが、退職金も割増しで加算されるみたいですし。
少なくとも、2022年に業界内を騒然とさせた【ヤンセンファーマのポジションクローズ】のようなエグさは見当たりません。
見る人によっては、かなり温情的な措置だと思うかもしれませんね。
しかし、リストラのターゲットにされている当事者にとっては戦々恐々といったところでしょうか。
リストラ対象年齢が“50歳以上”に設定されている辺りに闇を感じます…
ちなみにですが、今回のリストラ対象者はMRだけに限定されているワケではありません。
ですが、それでも数多くのMRがリストラの憂き目に遭うことでしょう。
ここで1つ忘れてはいけないのは、参天製薬のMRとは“眼科領域に特化しているMRである”という点です。
これは裏を返せば“眼科領域以外でのMR経験は乏しい”とも言えます。
つまり、参天製薬のMRとは良くも悪くも“尖ったキャリア”を形成してきた人たちなんですよね。
そのようなMRのリストラに関して、しかも50代という年齢を考慮した時に、一体何が起こるでしょうか?
その点について、昨今のMR転職市場の状況も踏まえながら紐解いていこうと思います。
眼科領域に特化している50代MRの再就職先とは?
参天製薬が発表した内容によると、希望者には再就職の支援を行うとのことです。
おそらくパソナのような人材紹介サービスによる支援を指していると思われますが、ここで問題になるのが参天製薬MRが培ってきたキャリアです。
先述した通り、参天製薬とは眼科領域に特化して活動しているメーカーです。
そこで働くMRたちもまた、眼科領域にて長年活躍してきた人たちのはずです。
そんな環境で働いてきた参天製薬MRがリストラに遭った際、今後も眼科領域のMRとして働きたいと希望したとします。
果たして、その願いは叶うのでしょうか?
客観的に見て、それは不可能とは言わないまでも、非常に難しいと思います。
…と言いますのも、業界内で参天製薬MRと親和性が高そうな会社(=眼科領域に強い会社)って、かなり限られていますよね。
眼科領域に強く、なおかつ参天製薬で培ったキャリアを万遍なく活かせそうな会社を挙げるとしたら、下記のような感じでしょうか。
・ロート製薬
・わかもと製薬
・日本アルコン
メガファーマを含めるとノバルティス辺りも眼科領域で活動していますけど、眼科領域に特化した仕事にありつけそうな会社としては上記の4社ですかね。
ご覧の通り、非常に数が少ないワケです。
それは即ち、参天製薬MRにとって望ましい再就職先が限られていることを意味しています。
そもそも、千寿製薬や日本アルコンが50代のMRを受け入れるだけの企業的余裕があるかどうかも怪しいですし。
もし仮に上手く眼科領域に強い会社に再就職できたとしても、それは圧倒的少数でしょう。
つまり結論として、リストラに遭った参天製薬MRが今後も眼科領域で働き続けられる可能性は低いと言えます。
そもそも現在のMR転職市場は、まさに空前の“買い手市場”なので…(汗)
一応、CSOの会社に再就職して、そこからコントラクトMRとして眼科領域で働き続けるという選択肢もあります。
しかしながら、如何せん眼科領域にてコントラクトMRの働き口が溢れているかと言うと、決してそんな事はありません。
何と言っても、眼科領域に限った話ではありませんが、どの領域でもMRが余っているような世の中ですからね。
だからこそ、常日頃から色々な製薬会社がリストラを行っているワケで。(汗)
よって、参天製薬MRにとっては酷な話ですが、引き続き眼科領域で働くこと自体が至難の業であると言えそうです。
リストラのタイミングで都合の良い転職案件が現れるなら、誰も苦労しないって話です…(汗)
“尖ったキャリア”は諸刃の剣か?
参天製薬MRが眼科領域での知識&経験に長けているのは周知の事実です。
眼科医の考え方を熟知し、あらゆる病院での眼科状況を把握し、眼科領域での新薬が発売しようものなら速攻で採用させる。
つまり、参天製薬MRとは眼科領域に特化したスペシャリストなんですよね。
そんなこと皆まで言うなって感じですけど、この“尖ったキャリア”こそが参天製薬MRの強みであり、そして弱みでもあるワケです。
眼科領域での仕事なら、お任せあれ。
眼科領域以外での仕事は、残念ながら門外漢。
これが参天製薬MRの実情なのかなと。
これがもし眼科領域での求人が溢れている世の中だったら、きっと参天製薬MRは引く手数多だったことでしょう。
好待遇でのヘッドハンティングもあり得たかもしれません。
しかし、残念なことに今は時代が悪過ぎます。
再三のことで恐縮ですけど、業界内にてMRが過剰であるのは紛れもない事実です。
リストラに遭った影響により転職市場を漂流しているMRは大勢いますし、そのくせ職を失ったMRたちの受け皿となるほどの求人は一切ナシ。
それどころか、一昔前なら転職市場に出てこなかったような超優秀MRですら、リストラを警戒して常に転職活動している始末です。
このブログでも【転職市場に優秀なMRが溢れている件】について記事化したことがありますけど、令和以降のMR転職市場ってマジで熾烈なんですよね。(汗)
特定の領域での勤続年数に加えて、大学病院の担当経験、KOLの担当経験、そして年齢に性別。
あらゆる要素で篩にかけられますので、生半可な職務経歴書では面接にすら進めません。
この令和の時代に『同業他社への転職なんて楽勝だよ!』などと本気で言っているMRがいたら、そのMRは凄まじく有能な傑物か、あるいは現実を知らない阿呆のどちらかだと思います。
転職にせよ、再就職にせよ、MRとして他社に移って働くのはそのくらい大変な時代なんですよね。
稀にどこかの製薬会社が営業組織の新規立ち上げによってMRを大量に募集することはあっても、その数もMRの総数から見れば微々たるものです。
余談ですが、2023年の大型募集案件としてはリジェネロン社が話題になりましたね!
こんなご時世に、眼科領域に特化している参天製薬MRが新たな働き口を見付けることは、やはり容易ではないと思うのです。
眼科領域以外でビジネスを展開している製薬会社、例えばですが糖尿病領域でバリバリ攻めているような会社が参天製薬MR(=眼科領域特化MR)を欲しがるかと言うと、そんなことはないですよね。
極端な話、今まで眼科領域でしか活動してこなかったMRが、今すぐに糖尿病薬の売上を伸ばせるでしょうか?
この辺りはMRの能力とやる気次第ですから、可能性は0%ではないかもしれません。
しかし、期待値という意味では決して高くはありませんよね。
少なくとも、雇用する側の製薬会社にそのように考えるはずです。
ましてや50代のMRともなれば、どの製薬会社だって採用に及び腰になるでしょうし。
よって、今回のリストラに遭った参天製薬MRは、昨今の転職市場で戦える要素を殆ど持ち合わせていないと言えます。
参天製薬MRが磨いてきたであろう“尖ったキャリア”が、まさに裏目に出てしまっている形です。
業界内ではプライマリーにせよオンコロジーにせよ、何らかの領域に特化している(=尖っている)人材が評価される傾向がありますよね。
しかしながら、今回の参天製薬の一件を見ていると“尖ったキャリア”も良いことばかりではないことが窺えます。
それどころか、領域特化タイプのMRは“つぶしが利かない”という見方すらできます。
そう考えてみると、MRが良かれと思って形成してきた“尖ったキャリア”とは、実は諸刃の剣なのかもしれません。
キャリアの良し悪しは表裏一体ということか…(汗)
最期に:領域特化型のキャリアは一長一短である!
今回の参天製薬のリストラによって、私は今後のキャリア構築について色々と考えさせられました。
…と言うか、キャリアそのものに関する是非が分からなくなってきました。
なぜかと言うと、この一連のリストラ劇は領域特化型MRに対して警鐘を鳴らしているように思えるからです。
特定の領域に拘りを持ってキャリアを磨き、MRとして栄達することを目指す。
プライマリーだろうがオンコロジーだろうが、その領域で一廉の人物となるべく努力し、MRとしての雇用を盤石のものとする。
それはMRとして王道の生き方だと思っていますし、私自身もそのようなキャリアを形成できるように今まで頑張ってきました。
おそらく、今この記事を読んでいるのが現役MRであれば、一定数の方々が同じようなことを考えて日々を過ごしていることと思います。
でも、実はこれってリスクが潜んでいる道でもあります。
そのことが参天製薬のリストラ劇によって浮き彫りになりました。
ある領域に特化しているということは、良く言えば専門性に秀でているということです。
しかし悪く言えば、汎用性に乏しいとの見方もできます。
まとめると、領域特化型の“尖ったキャリア”とは一長一短なんですよね。
領域を絞ってキャリアを積むことで、その領域での転職勝率は確かにアップすることでしょう。
その反面、代償として他の領域への転職勝率はダウンしていくことも否めません。
そして、より問題なのは後者の場合です。
もし何らかの事情により、他の領域に移らざるを得ない状況へと追い込まれたとします。
その際、MRとしての転職活動は困難を極めることになるでしょう。
今回の参天製薬MRの状況が、まさにそれです。
いざリストラなどで雇用が危ぶまれた際に、転職市場の動向次第ではMRとして磨いてきたキャリアが役に立たない可能性もあるワケです。
そう考えてみると、領域特化型のMR人生というのも決して安泰ではないように思えます。
転職を考える際に大切なのは“自分を必要としてくれる企業があるかどうか”です。
私がお世話になっている【MRの転職案件を扱っているエージェント】も、皆さん口を揃えて同じようなことを言っています、
相手の企業から見て、そのMRが磨いてきた知識&経験が魅力的に映るかどうか。
さらに極端なことを言えば、目の前にいるMR(=求職者)が自社のビジネスに好影響を与えるかどうか。
ますはこの条件を満たさない限り、書類選考の段階で弾かれること待ったなしです。
いくらMRとしての専門性に長けていたとしても、そのMRを欲しがる企業が存在しなければ無意味なのです。
その事実を忘れてはいけないのだと、参天製薬の一件で改めて痛感させられました。
昨今の“買い手市場”を考えれば尚更です…(汗)
転職活動を行うにあたって“自分がどのような企業で働きたいか”という気持ちは勿論大切です。
しかしながら、そんな希望が罷り通らなくなってきているのが今の世の中です。
平成の頃ならともかく、もはやMR側が求人を選り好みできるような状況ではないのです。
令和の時代にMRとして働き続ける以上、この現実からは逃げられません。
何はともあれ、今回リストラに遭った参天製薬MRには、少しでも良い形での再就職を果たしてほしいところです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
コメント投稿はこちら
こんばんわ。
参天製薬って、以前はリマチルとかアザルフィジンなどのリウマチ事業部持ってましたよね。
5〜6年前にあゆみ製薬に事業売却して、晴れて眼科専門の製薬会社になりましたよね。
事業部にいる社員ごと売却してたので、参天製薬もリストラをやるときはやるってイメージがありました。
たしかに眼科だと活躍できる会社が少ないし、50代からいけるとしても眼科に力入れてるジェネリックとか?になっちゃうんですかね。
ジェネリックといえど他業種よりは恵まれてるし、ジェネリックメーカーにいけるだけでも良かったりするんですかね?
コントラクトもプロジェクトありきだし、それこそ契約社員扱いになったりでなかなか辛い展開かもしれません。
キャリア途中下車さん
コメントありがとうございます!
恥ずかしながら、リウマチ事業部のことは詳しく知りませんでした。(汗)
早期退職した参天MRにとって、コントラクトMRに転職できれば“御の字”でしょうね。
しかし、昨今はコントラクトMRも飽和気味ですし、そう簡単にCSOへの転職が決まるとも思えません。
時代の厳しさを感じる事例ですね。