こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
先ほどミクスオンラインの記事を見ていたら、医薬品卸大手のメディセオが希望退職者を募集するとの記事が出ていました。
正確には、メディパルホールディングスの子会社であるメディセオ・エバルス・アトルの3社での早期退職募集ですね。
【速報】メディセオ、エバルス、アトルの3社で希望退職者募集 45歳以上・勤続10年以上
早い話、メディセオグループで一斉に人員削減するといったところでしょうか。
ミクスの記事では『希望退職』と銘打ってはいますが、実際には半強制的なリストラなのだと思います。
ところで、製薬会社ではここ数年間で散々リストラが行われたので多少のことでは驚かなくなってきていましたが、医薬品卸でのリストラ記事は久しぶりな気がします。
直近だと、2017年にスズケングループが423人もの大規模なリストラを行っています。
スズケン 希望退職者は423人に 当初募集人員上回る 約半数は営業
医薬品卸のリストラが大々的に報じられたのは、それ以来かも知れませんね。
メディセオグループの3社で何人退職するかは未知数ですが、先述したスズケングループでの事例を考えると、数百人規模の退職者が出ても不思議ではありません。
2020年12月 追記
メディセオグループ3社で合計560人もリストラすると報じられました。
医薬品卸では近年稀に見る大量リストラです…。
製薬会社だけでなく医薬品卸までもがリストラの時代に突入しようとしているのでしょうか?
本日はそのことについて書いていきます。
年功序列の給与体系が仇となっている?
とりあえず、ミクスの記事に掲載されたメディセオグループの希望退職について概要をまとめてみました。
対象者
メディセオ・アトル・エバルスに所属している45歳以上・勤続10年以上の社員
募集期間
2020年12月14日~12月25日
退職日
2021年2月28日(予定)
退職金
所定の退職金のほかに特別割増退職金を支給
その他
再就職支援あり
この内容を読む限り、製薬会社が行うリストラとまあまあ似通っている印象です。
さて、医薬品卸は製薬会社とは異なり利益額が乏しいビジネスをしていますから、製薬会社ほど退職金の上乗せは期待できないでしょう。
とはいえ、退職金が割増しで支給されるだけ良心的ではないでしょうか。
ところで、ミクス記事を読む限りだと希望退職の対象者は高齢の社員に限定されているのが印象的です。
ちなみに、ミクスの記事にはメディセオグループ3社(メディセオ・エバルス・アトル)の中で45歳以上の社員数は3,500人程度とされています。
45歳以上の社員ってそんなに多いんですね…。
これは大手製薬会社のMRよりも多い人数です。
でも、言われてみれば確かに分かる気がします。
私も元々は医薬品卸で働いていたので分かるのですが、メディセオに限らず医薬品卸には40代~50代の高齢社員が結構います。
少なくとも、20代~30代の若手社員よりは40代~50代の高齢社員の方が格段に多いです。
実際、私がMSとして働いていた頃は自社・他社を問わず、周囲にはオッサンのMSばかりでした。
この件については、若手社員が医薬品卸に定着せずに次々に離職しているという事情もあります。
何と言っても、私自身が『定着せずに離職した若手社員』に該当しますからね。(汗)
つまり、若いヤツが早々に辞めてしまい、オッサンMSを含む高齢社員ばかりが残る。
事務・倉庫・配送も同じく、オッサンとオバサンだけが残る。
その結果、必然的に社内にて高齢化現象が起こるというワケです。
ところで、なぜ今回はリストラ対象が45歳以上として設定されたのか?
答えは単純でして、これには医薬品卸の給与体系が関わっているからでしょう。
医薬品卸とは典型的な年功序列の給与体系でして、若手社員ほど給料が安く、勤続年数が長い高齢社員ほど高給取りです。
(※補足ですが、医薬品卸では若手社員がどれだけ好成績を叩き出したとしても、成績下位の高齢社員の年収にすら遠く及びません。)
流石に製薬会社のMRほどではないにせよ、メディセオのような4大卸かつ45歳以上の社員となると、結構な金額の給料を貰っているのではないでしょうか?
気になったので、この機会にメディセオを含む4大卸の平均年収を調べてみました。
(※2019年3月期の有価証券報告書より)
メディパルホールディングスはメディセオの親会社なのであくまで参考の金額ですが、一般的な会社員としてはかなり高給な部類に入るのではないでしょうか?
もし仮に45歳以上で年収700万~800万クラスの社員がゴロゴロいるのだとしたら、中堅規模の製薬会社MRと同レベルの販管費が掛かっているようなものです。
いくらメディセオグループの売上高が巨大とはいえ、医薬品卸のような薄利多売のビジネスでそれだけの販管費を賄えるかと言うと、ハッキリ言って難しいでしょう。
業種は違えど、今や中堅製薬メーカーもMRをリストラする時代です。
そう考えると、メディセオグループの早期退職はあながち不思議は話でもないように感じます。
GSKやノボノルディスクファーマとの取引中止が影響している?
今年の10月26日にGSKがメディセオと取引を打ち切るとのRISFAXにて報道がされました。
GSKがメディセオ&地方卸との取引を打ち切る理由について考えてみる
さらに遡ると、2019年にはノボノルディスクファーマも同じようにメディセオとの取引を打ち切っています。
ノボ 取引卸を削減へ 薬価制度改革など市場環境悪化で物流にメス 他の外資に波及の可能性も
その理由は諸説ありますが、私個人としてはリベートやアローアンスの利益関係が絡んでいると予想しています。
医薬品業界の『リベート』について解説します!製薬会社の苦しい本音とは?
製薬会社が医薬品卸に支払う『アローアンス』とは?医薬品業界の真実をお伝えします!
先ほど4大卸の平均年収について言及しましたが、詰まるところ、医薬品卸の社員が貰っている給料の源とはリベートやアローアンスです。
とりわけメディパルホールディングスは他の4大卸より平均年収が高いですから、それだけアローアンスやリベートに依存した給与体系だったのでは?と思うのです。
加えて、GSKやノボノルディスクファーマといった外資系製薬メーカーは日本の医薬品卸の存在意義について懐疑的です。
どこまで本当かは分かりませんが、
何で日本の卸とかいう会社に、いちいちカネ(リベートやアローアンス)を払わなきゃいけないの?
…という考え方の経営陣が外資系メーカーには多いそうです。
海外では医薬品物流を行う会社に多額のリベートなどをつぎ込むことは一般的ではないらしく、米国に至ってはMSという職種すらありません。
(※米国では製薬会社と契約しているコントラクトMRが、MSに近い業務を行っているそうです。)
以上のことを考えてみますと、現行の給与体系を維持するために高額なリベート&アローアンス交渉を行った結果、製薬メーカー側から反感を買ってしまった…という側面が少なからずあるのではないでしょうか?
もちろん、GSKやノボノルディスクファーマが医薬品卸各社の物流機能を検討した結果、メディセオには流通を任せる価値無しと判断しただけかも知れませんけど。
ただ、10月26日にGSKとの取引中止が公になり、その矢先である10月30日にこういった希望退職の記事が出たので、やはり製薬メーカーとの関係不和も少なからず今回の希望退職に影響しているのではないでしょうか?
RISFAXの記事では、メディセオにおけるGSK品目の販売金額は500億円超と書かれていました。
これはとてつもない金額です。
メディセオグループの売上高は2兆円以上ですから大して影響がないように見えるかも知れませんが、ご存知の通り医薬品卸は薄利多売の商売をしています。
仮に500億円の粗利を1%としても、単純計算で5億円の金額になります。
売上ではなく、利益だけで5億円ですよ?
5億円もあったら、それだけで数十人の社員を雇用できますよね。
その金額が一気に吹っ飛ぶわけですから、やはり希望退職を募るのは現実に即した流れなのだと思います。
決算結果から考えると、今回のリストラは未来を見越した決断か?
メディセオグループに限った話ではありませんが、2020年上期(4月~9月)における各医薬品卸の決算結果は惨憺たるものです。
メディセオを含む4大卸から地場卸まで、あらゆる医薬品卸の営業利益率が大幅ダウンしています。
この業界史上、ここまで業績が悪いのは初めてじゃないかってくらいのヤバさです。
大手医薬品卸4社の営業利益率がヤバい!コロナ禍・仕切価上昇・価格競争の影響が深刻すぎる!
スズケンに至っては営業利益額がマイナスであり、ついに赤字になってしまいました。
メディセオは営業利益額に関してはまだ黒字をキープしていますが、それでも対前年と比べたら大幅に利益が減っています。
こういったリストラ発表時には会社の決算書を読んでみるのが一番です。
なぜなら、数字は嘘を吐かないからです。
決算書を読むことでその会社の現在の状況が分かりますし、その結果から未来を予測することも出来ますからね。
若手MSにお勧めしたい決算書に関する書籍2選!若いうちに決算書を読む力を身に付けよう!
さて、今のところメディセオグループを含めて、どの医薬品卸も起死回生の一手を見出せていない状況です。
コロナ禍が終息する気配は全くありませんし、それどころか第3波の到来が囁かれています。
医薬品卸同士の価格競争も激しさを増していますし、メーカーからの仕切価格だって今後上がることはあっても、下がる見込みはないでしょう。
つまり、医薬品卸を取り巻く環境は悪化するばかりであり、その一方で明るいニュースは乏しい状況です。
この辺りの事情はMS(営業職)や管理職なら肌身で感じているかと思いますが、内勤職の人にとってはイマイチ感じにくい部分なのかも知れませんね。
さて、どの医薬品卸も会社として生き残るために色々な戦略を打ち出していますが、それもどこまで上手く行くか疑わしいものです。
その間にも医薬品卸同士の熾烈な価格競争は続くわけですし、しかも、その競争から逃れる術がない。
価格競争から逃げれば他の卸がシェアを奪っていくだけですからね。
シェアが減った分だけ、医薬品卸の収益源であるリベートやアローアンスも減ることになります。
よって、これまたメディセオグループに限った話ではありませんが、医薬品卸としてたとえ安売りすることになろうとも、基本的には価格競争から逃げるという選択はあり得ないのです。
このような状況では、会社としてのコストカットも今まで以上に行っていく必要があります。
そして、こういった経営が苦しい状況においては従業員の存在そのものがコストであり、会社側としては人員を削減したいと思うのは当然のことです。
これは医薬品卸のみならず、製薬会社でも頻発している現象です。
そこにきて、先ほどのGSKとの取引停止です。
会社としてここまで悪いことが重なるとは、まさに『泣きっ面に蜂』というヤツです。
よって、メディセオグループは現在の状況から未来を予測し、リストラという手段に踏み切ったのでしょう。
早期退職して再就職できる人間は一部だけ?
今回のリストラ対象者について、ミクス記事を見た限りだと職種は特に限定されてません。
つまり、MS(営業職)だけでなく、事務職、配送職、企画職、薬剤師職、倉庫係、果ては管理職まで、あらゆる職種の人間が対象だということです。
この場合、管理職であれば上手く行けば他職種でのマネージャー待遇で転職することも可能でしょう。
また、薬剤師免許を持っている社員であれば、再就職にはそこまで困らないでしょう。
他卸の薬剤師職に調剤薬局など、条件を選ばなければ再就職の可能性は大いにあります。
しかし、その他の職種についてはどうでしょうか?
MSのような営業職であれば、職歴を活かすことで他業界の営業職や、あるいは他卸のMSに転職するという選択肢もアリでしょう。
しかし、何と言っても今回の対象年齢は45歳以上ですから、転職市場でのポテンシャル採用などは極めて難しいはずです。
しかし、それでもMS(営業職)はまだ再就職には困らない方かと思います。
どんな地域でも営業職の求人は一定数ありますからね。
ですが、事務職、配送職、倉庫係などは再就職するにしても相当厳しいのではないでしょうか。
大都市か地方かで事情は変わってくるかと思いますが、例えば田舎にて45歳以上の人間を正社員で雇ってくれる企業がどれだけあるかと考えたとき、正直言って疑問です。
メディセオのような大企業からの転職だと年収がダウンする可能性が高いでしょうし、事務・配送・倉庫などで正社員の求人があるかも怪しいです。
下手をしたら、45歳どころか35歳でも厳しいかも知れません。
私も転職経験があるからこそ分かるのですが、転職の選考はとても残酷です。
相当な準備をして履歴書・職務経歴書などを仕上げたとしても、年齢という要素だけで落とされることも多々あります。
よって、45歳以上という年齢を踏まえると、少なくとも今すぐに再就職先を見付けられる人は少数派でしょう。
そう考えると、まずは次の職場を見付けやすいであろう管理職・薬剤師職あたりがメディセオグループに見切りを付け、自発的に辞めていくのでしょうか?
あるいは、製薬会社でよくあるようにリストラ候補者が既にピックアップされていて、11月から順次肩叩きされるのでしょうか?
もしリストラ候補者が挙がっているなら、営業・事務・配送・倉庫などの各部門で『最低○○人は辞めてもらう』みたいは方針が既に固まっていることでしょう。
そうなった場合、やはり再就職の可能性がある人間ほどプレッシャーは軽くて済むのではないでしょうか。
その一方で、再就職の可能性が乏しい人ほど厳しい現実が待っているのは間違いありません。
ましてや、転職経験がない人であれば苦戦は必至でしょう。
転職とは一朝一夕でできるような類のものではありません。
もし医薬品卸に籍を置きつつ転職活動をしたとして、次の職場がすぐに決まるとしたら、それは薬剤師の人くらいでしょう。
私(MR)にとってもリストラは他人事ではないせいか、こういったリストラ関係のことを考える度に思うのですが、薬剤師のような資格職はこういった有事の際に強いということを改めて感じています。
最後に:他の医薬品卸もメディセオグループに追随するか?
2019年の年末から談合疑惑が浮上し、2020年の春からは新型コロナウイルスによる業績不振に陥り、その結果として発表された突然の希望退職募集。
メディセオグループのみならず、まさに悪い意味で医薬品業界の過渡期とも言うべき時代です。
そして、2020年12月28日にはメディセオグループ3社で560人もリストラすることが明らかになりました。
メディセオグループのリストラ人数が560人!医薬品卸によるリストラブームの前兆か?
560人…凄まじい規模のリストラです。
単純な人数だけなら製薬会社のリストラをも上回っています。
このような状況では、今後はアルフレッサ・スズケン・東邦薬品といった他の4大卸や、地方の地場卸でもリストラが始まってもおかしくないです。
たまたま直近では医薬品卸における一番手リストラとしてメディセオグループが報道されただけで、数ヶ月後には他の医薬品卸がリストラ発表をしても何ら不思議ではありません。
むしろ、昨今のMS減少の状況などを考えると、会社存続のために希望退職者を募ることは妥当な流れだと思います。
さらに言えば、4大卸以上に地方の地場卸はことさら危うい状況です。
今回のメディセオグループの希望退職では金額の大小は別として、割増しの退職金が支払われます。
割増し退職金があるということは、まがりなりにも会社の財務状態に多少は余裕があることを意味しています。
本当に余裕がない会社だと、割増しどころか、正規の退職金すら満足に支払えませんからね。
医薬品卸は薄利多売であるが故に、会社としての収益は単純な売上高に左右されがちです。
そう考えてみると、地場卸の規模では希望退職⇒割増し退職金という流れが実現するかどうかも怪しいです。
…とまあ、ここまで色々と書いてきましたが、医薬品卸のように薄利多売の業種で割増し退職金が支払われること自体、ある意味では温情的な措置と見えなくもないです。
退職金の有無、そして『割増し』というプラスアルファの有無によって、退職に対する社員のモチベーションも変わってくるでしょうからね。
まとめると、会社として余裕があるうちに希望退職者を募り、人員の適正化を図る。
従業員としては受け入れ難いことでしょうけど、そんな考えの医薬品卸が次々と現れるような気がしてなりません。
こういったリストラ関係の記事を書く度に思うことですが、いつ肩叩きに遭っても大丈夫なように、常に転職市場を意識することが大切だと再認識しました。
『転職会議』という口コミのサイトを知っていますか?ユルく転職活動したい人にオススメです!
転職サイトに登録したり、転職エージェントに相談したり、友人知人に働き口を尋ねてみたりなど、何らかの準備をしておかないと、いざというときに行動することが出来ません。
転職市場における自分の価値を知ることは確かに怖いです。
年齢制限に引っ掛かって書類すら通らないかも知れないし、それ以前に、転職エージェントからボロクソに言われるかも知れない。
(※私は転職希望者にボロクソ言うような転職エージェントには出会ったことがないですけど…。)
ですが、そういった恐怖の感情に向かい合ってこそ、良い転職ができるのも事実です。
MSからMRへと転職を経験した身として、それだけは断言できます。
…とはいえ、何だかんだ言って転職するときは不安になりがちです。
私も医薬品卸を辞めるときは、転職エージェントにメチャクチャ相談しましたからね。(汗)
おかげ様で、今はMRとしてそれなりに充実した日々を送っています。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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