こんにちは、元MSのヒサシです。
元号が令和に変わって以降、医薬品卸による土曜日配送の廃止が止まりませんね。
地域によって多少の違いはありますが、各卸が“土曜日の在り方”を現在進行形で見直しています。
このままのペースで進めば、業界内にて土曜日の配送が完全に消滅する日も遠くないかもしれません。
土曜日配送をバリバリやっていた平成の頃を考えれば、これは大変革と呼べるかも?
ちなみにですが、こういった卸各社の姿勢について、病院・開業医・調剤薬局などの顧客層からは非難轟々なのだとか。
今まで享受していたサービスが廃止されるのだから、そりゃ文句の1つでも言いたくなることでしょう。
土曜日に薬の在庫が足りなくなったら、一体どうすれば良いのか?
土曜日に処方予定の薬について、金曜日にまとめて発注しろと言うのか?
土曜日に薬を届けてくれないのなら、医薬品卸の企業価値は地に堕ちたも同然では?
MS時代の同期や後輩から話を聞く限りでは、顧客からは上記のような“怨嗟の声”が後を絶たないのだとか。(汗)
しかしながら、顧客からの批判を浴びてもなお、土曜日の配送から手を引こうとしている医薬品卸。
これには勿論、それ相応の理由があってのことです。
土曜日の配送を続けたところで、会社として疲弊していく一方でしかない。
この消耗一辺倒の状況を改善するためには、土曜日の配送そのものを廃止する必要がある。
そう結論付けたからこそ、全国各地にて卸各社が土曜日配送の廃止を押し進めている。
詰まるところ、そういう話です。
無い袖は振れない…という事ですね(汗)
今のご時世、どこの医薬品卸もコスト削減について血眼になっています。
顧客に提供するサービスについて優先順位を付け、採算の合わないモノを見直す。
その見直し対象の1つが、土曜日の配送業務ということですね。
そんな土曜日配送の変遷について、MS時代の経験に基づいて綴ってみました。
医薬品卸には土曜日配送を続けるだけの余裕がない
なぜ医薬品卸は土曜日配送の廃止するのか?
それは言うまでもなく“コスト削減”が目的です。
このブログでも幾度となく触れてきましたが、医薬品卸の利益状況は悪化の一途を辿っています。
アルフレッサも、メディセオも、スズケン、東邦薬品も、各地の地場卸も、皆そうです。
各社ともに、利益を稼げずに苦しんでいる。
その反面、社内でのコストは嵩んでいくときた。
だったら、コスト面を見直してバランスを取るしかない。
詰まるところ、そういう理屈です。
では、社内のどういった部分についてコスト削減を行えば良いのか?
…ということを考えたときに、土曜日配送が“見直しの対象”として挙がってきたというワケです。
大体にして、土曜日の配送って会社としては儲からないんですよね。
土曜日に営業している医療機関は、平日ほど多くはないワケですし。
もし営業していたとしても、薬の発注量は平日と比べれば微々たるもの。
即ち、単純な売上や配送量で言えば、平日のソレには遠く及ばない。
そのくせ、配送のコストは高くつくときた。
極端な話、とある施設のために【オリコン】で1箱分の薬を届けるのと、5箱分の薬を届けるのとでは、それほどコストは変わらないんですよね。
どうせ配送のために車を運転する時間&距離は変わらないワケですから。
早い話、費用対効果のバランスが悪いということです。
大したことのない物量のために人員を割き、ガソリンを消費し、高速道路を利用する。
会社目線で考えたときに、こういった業務について“無駄が多い”と判断するのは当然のこと。
率直に言うと、採算が合わないということです。
だからこそ、医薬品卸は各社ともに土曜日配送を廃止しているのです。
不採算事業が縮小されるのは世の常ですからね…
こうやって考えてみると、平成から令和にかけて、土曜日配送の在り方が大きく変わったと感じられます。
まだ私がMSとして働いていた平成の頃は、医薬品卸は土曜日の配送にメチャクチャ力を入れていたんですよ。
なぜかと言うと、競合他社とのシェア争いに勝つためです。
少しでも配送体制を手厚くして、顧客からの評価を受け、売上&利益のアップに努める。
その一環として、土曜日配送を充実させようと各社が躍起になっていました。
それこそ、広域卸・地場卸ともに例外なくです。
令和となった現在では信じられない話ですが、地域によっては土曜日なのに3便~4便くらいを走らせていた卸もありましたからね。
MSの天敵とも言われている【急配】も二つ返事で受注し、内心はともかく顧客への“誠意”を絶やさない。
むしろ、自社・他社を問わず、土曜日においても急配の回数&スピードを卸同士で競っているような節すらありました。
本来は13:00や14:00くらいで業務終了のはずなのに、配送に次ぐ配送によって、最終的に退勤する時間帯が18:00とか19:00になるとかザラにありましたし。
自分自身のMS経験を振り返ってみても、過重労働だった気がしてなりません。
ウチの会社、土曜日なのに頑張り過ぎでは?
…などと、MSながらに思ったこともあります!
いやはや、今では信じられない話ですよね。
ですが、こういった過剰サービスによって、顧客側が増長してしまったことも否めません。
それが巡り巡って、医薬品卸が疲弊する遠因になったとも思えるのです。
かつては医薬品卸が精を出していた土曜日の配送業務。
それが今やコスト削減の対象へと成り下がるとは。
かつて医薬品卸で働いていた身としては、時代の流れというものを感じます。
一部の“悪質な顧客”が卸を疲弊させた
ある市町村において、1軒だけに配送する場合と、近隣に密集している5軒にまとめて配送する場合。
実はですね、両者の配送コストは大して変わらないんですよね。
繰り返しになって恐縮ですが、車を走らせるために要するガソリン代・高速道路代などは同じくらいなので。
従いまして、コストを上回るだけの売上(利益)を叩き出すためには、大まかに2つの方法があります。
① 1回の配送便でなるべく多くの施設に薬を届ける
② 1軒あたりの配送単価をアップさせる
要するに、配送の“量”または“質”のどちらかを高めれば、コスト面での帳尻が合うということです。
しかし、土曜日において①は期待できません。
先ほどお伝えしたように、平日に営業している医療機関は少ないからです。
では、②についてはどうか?
いやいや、こちらも土曜日の場合は物量が少ないことから、配送単価については望み薄です。
つまり、質・量ともにダメ。
…と、それだけならまだ良いのですが、ここでより医薬品卸を苦しめているのが“悪質な顧客”の存在です。
例えばですが、土曜日にも関わらず【急配】でロキソニンやカロナールのような汎用薬を“100錠だけ”注文してくるとか。
他には、正午くらいに設定されている注文の締め切り時間を無視して、半ば無理矢理な形で当日中の配送依頼をしてきたりとか。
極めつけに、卸が必死こいて土曜日中に届けた薬を、週明けの月曜日に【返品】してきたりとか。
しかも、何食わぬ顔で。
まるで医薬品卸のことを、家来や小間使いなどと勘違いしている節すらあります!
卸目線で考えたときに、どうしようもなく悪辣な医療機関。
少数ながらも、こういった厄介な顧客がいるのは紛れもない事実です。
MS時代に体感した“厄介な取引先”の特徴5選!彼らの悪意に振り回されてはダメだ!
上記のようなタチの悪い輩によって、医薬品卸は長年に渡って振り回されてきたワケです。
土曜日であるにも関わらず、わざわざ【急配】でロキソニンを100錠だけ注文してくるようなタチの悪い施設。
そんな顧客は、ハッキリ言って全体の1割程度です。
ですが、その1割の顧客によって、卸は疲弊してきたという歴史があります。
早い話、卸側は顧客の“我儘”に付き合う形で、各種コストを支払い続けてきたのです。
1箱あたりの包装薬価が1,000円もしないような安い薬。
利益金額に換算すれば、1箱あたり100円もないような薬。
そんな薬を届けるために、何千円あるいは何万円という人件費・ガソリン代・高速道路代が幾度となく発生してきたのです。
しかも、場合によっては届けた翌週に返品を食らうというオマケつき。
その返品に伴う作業においても、時間的&労力的なコストが発生しています。
そういった小さなコストの積み重ねが、ジワジワと医薬品卸を蝕んでいったのは間違いありません。
例えるならば、顧客による“ボディブロー”といったところでしょうか。
あるいは、気付いたときには既に手遅れな“遅効性の毒”か。
1回だけならいざ知らず、10回、100回、1,000回とコレが続いたらどうでしょうか?
何年もの間、こんな状況が続いたとしたらどうでしょうか?
そう、赤字になるに決まっています。
少なくとも、土曜日の配送に関してはそうです。
会社として、お金を溝に捨てているのと同じなワケですから。
何れにせよ、医薬品卸にとって『土曜日なんて頑張るだけ無駄』と思わせた要因として、先述した“悪質な顧客”が関わっていることは疑いない。
私個人としては、そのように思えてなりません。
卸の従業員は土曜日出勤が減って喜んでいる?
土曜日に配送を行う場合、MS(営業)・事務・倉庫係・配送スタッフなど、多くの従業員たちが出勤してきます。
その営業所に勤めている全ての従業員が出勤するワケではないにせよ、かなりの人的リソースを割いていることは事実です。
そんな卸の従業員たちが土曜日に業務をこなした場合、代休(あるいは振替休日)を取得することが殆どです。
いや、この場合は代休を“取得する”のではなく、会社からの指示で“半ば強制的に取得させられる”と表現した方が適切でしょうか。
なぜなら、医薬品卸は休日の割増賃金を支払いたくないからです。
言葉は悪いですが、卸って給与関係についてはケチですからね…
賃金という形で従業員たちに報いるのではなく、土曜日に出勤した分は別日に休ませることで折り合いをつけたい。
つまり、これは労働基準法に基づいた措置でありながらも、会社としては出来る限り販管費を抑えたいという思惑が根底にあるんですよね。
これの何が厄介かと言うと、土曜日に出勤した分の休みを“平日に取得しないといけない”という点です。
ご存知の通り、医薬品卸は常にギリギリの人員で仕事を回しています。
それこそ気力・体力の限界に迫るような勢いで、営業所内を切り盛りしているような場合も少なくありません。
そこに加えて、土曜日に出勤した従業員たちが代休を取得したらどうなるでしょうか?
平日はさらなる人員不足に陥ってしまい、通常の業務が滞りがちになります。
これは私がMSとして働いていた平成の頃から問題視されてきた事であり、令和以降も卸各社を悩ませている難点でもあります。
結果として、平日に業務過多となる従業員が増えれば、様々なリスクが付随してきます。
MSに関して言えば、代休だろうとお構いなしに携帯電話が鳴り、自宅にて顧客対応を余儀なくされることも多いです。
これでは心身を休めるどころか、余計にストレスを溜め込むこと待ったナシです。
事務員に関しては、出勤中の少人数だけだと電話・伝票・書類などを捌き切れず、業務が後手に回りがちになるでしょう。
そうなれば当然、最終的には顧客に迷惑を掛けてしまう一因にもなります。
配送スタッフについては、これまた少ない人員で配送を行っていれば、疲労困憊で交通事故を起こしてしまう可能性も跳ね上がります。
もし交通事故が1件でも起きようものなら、車の修理代だけで何十万円というお金(経費)が吹っ飛びますからね。
人命を守るのは勿論のこと、こういったコスト面のリスクも軽視できません。
従いまして、土曜日配送に伴う労働面での代償とは、決して小さくはないのです。
しかしながら、土曜日の配送そのものが廃止されたとなれば、上記のような問題やリスクは解消されます。
顧客からは非難轟々であろう土曜日配送の廃止ですが、見方を変えてみると、卸の従業員たちにとっては喜ばしいことだとも言えるワケです。
彼らとて、生身の人間です。
悩みのタネであった過重労働が改善されるのならば、表には出さずとも、内心ではガッツポーズしている人たちも多いのではないでしょうか?
自分が今でも現役のMSだったとしたら、きっと土曜日配送の廃止を歓迎していたと思います!
最後に:土曜日配送の廃止は今後も続くだろう
収益悪化に伴う社内でのコスト削減。
無秩序に卸を振り回す顧客への対策。
従業員たちの労働環境に関する改善。
どれもこれも、土曜日配送の廃止によって好影響が見込める要素だと言えます。
つまり、医薬品卸にとっては土曜日配送を“廃止しない理由”が無いのです。
以上のことから、土曜日配送の廃止は今後も続いていくことでしょう。
付け加えるとしたら、土曜日配送は収益性が悪いエリアから順次廃止されていく事が容易に想像できます。
大して儲からないエリアでの配送業務のためにリソースを割いているようでは、営利企業として本末転倒ですからね。
顧客側にとっては面白くない展開でしょうけど、これもまた、卸にとっては当然の判断です。
自社に痛みを強いてまで続けるサービスなんて、どう考えても長続きはしないのです…
実はこの記事を書くにあたって、私はMS時代の同期や後輩からの証言を参考にしながら執筆しました。
…で、同期・後輩の話を聞く限りだと、土曜日配送の廃止について、顧客からの批判には凄まじいものがあるようです。
土曜日に医薬品の配送を行わないなんて信じられない。
今まで通りに薬を届けてもらわないと困る。
お前たちは医療機関のことを何だと思っているんだ。
全ての施設ではないにせよ、このようなクレームへの対応を行うことも少なくないのだとか。
理由はどうであれ、罵詈雑言を叩き付けられるMSたちの心情は、決して穏やかではないことでしょう。
土曜日配送の廃止はMSが決めたことではなく、会社が決めたことだというのに。
さらに突き詰めて考えていくと、卸が疲弊した原因の一部は顧客にもあるというのに。
…という観点からこの現状を紐解いていくと、土曜日配送の廃止云々には“根が深い問題”が潜んでいるようにも思えるのです。
以前、このブログ内で『卸による顧客への奉仕精神には凄まじいものがある』といった記事を書いたことがありました。
(※詳細については下の記事をご覧ください!)
なぜ医薬品卸の社員は顧客のことを『得意先』と呼ぶのだろうか?
今にして思えば、医薬品卸は顧客のために尽くし過ぎたのでしょう。
土曜日の手厚い配送体制によって、皮肉にも顧客の中に“甘え”を生んでしまった。
私には、そんな風に思えるのです。
土曜日であっても、卸に注文すれば薬を持ってきてもらえる。
だから在庫管理をテキトーにやっていても大丈夫!
…といった甘えが、顧客が増長していく呼び水となってしまった。
その結果として、土曜日の配送業務を通じて、卸が疲弊してしまう流れが生まれてしまった。
これは紛れもない事実です。
これは、シェア獲得のために土曜日配送へと注力し始めた卸側が悪いのか?
それとも、卸による土曜日配送に甘えてきた顧客側が悪いのか?
考えれば考えるほど、難しい問題であるように思えてなりません。(汗)
ただ1つだけハッキリしているのは、土曜日の配送そのものが是正されるべき局面になっているという事です。
医薬品卸各社にとって、これは既定路線であると言えそうです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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おっしゃる通り、土曜の配送は量、質ともに効率悪すぎですよね。金曜に配達しきれなかった商品や、お約束のように無茶振りされた商品が殆どの印象です。得意先も平気で「金曜中じゃなくて土曜配達でいいです」とか言ってましたからね。
まあ施設によっては都合も分かるっちゃ分かるんですけどね。中には土日もフルでやってる医療機関もあるし、そういう施設は絶対に薬足りなくなるしイレギュラーだって起こります。
ただ、大多数の施設は「これって本当に土曜に必要?」というような注文ばかりで、言っちゃ悪いけど完全に怠慢です。卸が甘やかしすぎたツケとしか言えないですね。
あと、土曜配送自体は無くさなくてもいいけど、土曜配送は自動的に別途1000円徴収とかにすればいいと思います。卸の利益率は1%なので、1000円だとしても10万円の売上と同等の価値ですから。
you2さん
コメントありがとうございます!
卸が甘やかしたツケ…これが今の状況の根底にあるのは間違いないですね。
土曜日配送そのものに別途料金を請求することに関して、各卸ともに実践する価値はあると思います。
ただし、どこの卸も率先してチャレンジする可能性は低いのかなと。
急配の有料化と同じで、これを一番手で実行した卸は顧客からボロクソに叩かれるでしょうからね。
弱い立場であるが故に、卸は顧客に対して強く出られない…世知辛い話です。
急配もそうですけど、正直、別で配送料金を徴収するようになれば、土曜配送も急配も現在の半分以下になると思います。3割以下かもしれません。
そうすることで無駄な配送コストも削減できて、本当に急配や土曜配送が必要な施設のためにリソースを割くことが可能になるので、みんなwin-winだと思いますけどね。通常のサービス以上を求めるならば、別料金を課金するのが当たり前の話です。
you2さん
追加コメントありがとうございます!
土曜日配送もまた、医薬品卸が自ら生み出してしまった「過剰サービス」の1つなんですよね。
これを是正しつつ土曜日配送を継続するためには、you2さんが仰るように別途料金などの制度を設けるのが現実的なのでしょうけど…
果たして、卸の偉い人たちは土曜日配送に関してどう思っているのでしょうね。
「お得意先のために頑張る」という理念を掲げてはいても、実際には「今さら別料金について検討するのは面倒だし、そもそも土曜日配送そのものが無駄だから辞めてしまえ」みたいな思考回路なんですかね。
まあ、偉い人間とは怜悧冷徹であることが世の常ではありますけど。(汗)
ヒサシさんこんにちは。現在令和4年もあと少しで半年を迎えようとしておりますがここに来て卸の土曜日配送中止の波が来ているとは知りませんでした。そう私も業界から離れてからそろそろ一年半になろうとしているのですからそんな(良い)話は耳に入ってこないはずですよね。考えてみれば私もヒサシさんも知らないまだ卸が土曜日を半ドンとして仕事をしていた頃から週休二日制にした時にもそれはもう散々文句を言われながらも強行した話を聞いていましたのでその時の事を考えれば卸が横並びで実行すればよいのですよ。でも大きな大学病院は難しいかも知れません。しかし現在の卸の発注システムや院内物流システムをもってすればそれらも可能だと私は思いますよ。
ホルモンさん
コメントありがとうございます!
今は現在進行形で各卸が土曜日配送から手を引きつつある状況ですね。
大学病院などの重点施設には柔軟な対応をしている卸もあるようですが、少なくとも開業医・調剤薬局などへの土曜日配送は完全に辞めた卸も現れ始めています。
もし仮に土曜日配送を行い続ければ、最終的にはその卸が(コスト的な意味で)貧乏クジを引かされますからね。
これもまた、平成の頃とは卸の配送体制が大きく変わってきている証拠ですね。