こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
4月13日の日刊薬業とミクスオンラインにて、ノボノルディスクのベック社長によるインタビュー記事が載りました。
ノボ・ベック社長、20年国内増収「誇りに思う」成長要因は19年以降の糖尿病薬上市
ノボ日本法人のベック社長 肥満症、CKD、CVD、NASHなど「深刻な慢性疾患」の克服に注力
ちなみに、ベック社長のご尊顔はこちら。↓
これらのインタビューの中で、
ノボノルディスクによる取引卸の削減効果
…についても言及がされています。
結論から言うと、ノボノルディスクという会社としてはプラスの影響があったみたいです。
まあ、プラス影響が見込めないようならノボだって取引卸を減らしたりはしなかったでしょうけど…
ただ、今回のベック社長の発言について、医薬品卸で働いていた私としては色々と思うところがありまして、この記事を書いてみます。
そこで、独断と偏見に基づいてベック社長の発言の真意ついて、ひいては医薬品卸の未来について考察していこうと思います!
ベック社長の発言内容
医薬品業界では有名な話ですが、ノボノルディスクファーマは2019年に突如、複数の医薬品卸との取引を中止すると発表しました。
いわゆる『卸切り』です。
特に、取引中止対象の中に4大卸の一角であるメディセオが含まれていたこともあり、当時は業界誌でも大々的に取り上げられました。
ノボ 取引卸を削減へ 薬価制度改革など市場環境悪化で物流にメス 他の外資に波及の可能性も
この報道の直後、MSあるいはMRの界隈では、それはもうザワついたものです。
さて、そんな電撃的な卸切りから2年が経ち、ベック社長はこんなことを語っています。
以下、日刊薬業やミクスオンライン記事の要約です。
正直に言うと、卸切りを問答無用で実行したベック社長は『アンチ医薬品卸』の急先鋒みたいな人かと思っていましたが…
これらの発言内容を見る限りでは、ベック社長は医薬品卸全体を否定しているというワケではなさそうですね。
自然災害のリスクを考えて、複数の医薬品卸との取引を継続していくみたいですし。
ところで、これらの発言内容はベック社長の本音なのでしょうか?
それとも建前なのでしょうか?
その辺りを深堀りしていこうと思います。
『今のところ』という言葉に秘められた真意
私が個人的に最も気になったのは、
今のところ、取引卸をこれ以上カットする予定はない。
…という件です。
今のところ
…と言うことは、
この先はどうなるか分からない
…とも言えます。
もし必要であれば、今以上に取引卸を減らすことも視野に入れている。
邪推かもですが、私はそんな風に解釈しています。
このご時世、状況は刻々と変化しています。
コスト削減のため、製薬会社がMRをリストラするなんて話は日常茶飯事です。
ましてや、2020年から始まったコロナ禍によって、各製薬会社は混乱の最中にあります。
この状況で、ノボがさらなるコスト削減に迫られたらどうなるでしょうか?
多分ですけど、ベック社長みたいな改革派タイプは、第2回目の卸切りをやってのけるんじゃないですかね。
自然災害のリスク云々にしても、1社だけの物流だと心許ないのであれば、取りあえず2社と物流契約しておけばいい。
3社以上の医薬品卸との契約すると、状況次第では無駄なコストが増えるのでは?
…なんてことを、ベック社長のようなタイプだったら考える気もします。
4大卸で言えばメディセオが脱落し、アルフレッサ・スズケン・東邦の3社がノボと取引を続けている状態ですが…
ある日突然、アルフレッサ・スズケン・東邦のうち、どこか1社だけが切られる可能性もゼロじゃないのかなぁ…などと思っている自分がいます。
製薬会社にとって取引卸は少ないほど助かる!?
正味な話、メディセオを含む複数の医薬品卸との取引を中止したことで、ノボの業績に好影響を与えたのは事実です。
2019年4月17日のミクス記事でも、ベック社長は『デポの数を25%、配達や請求書の数も33%削減できた』と言っています。
ノボ ベック社長 国内売上高は対前年比5.3%減 「薬価改定が影響」と指摘
ノボから医薬品卸への薬剤配送。
その配送に伴う請求書。
これらを33%も削減できたのだとしたら、やはりコストを下げる取組みとしては大成功だったのではないでしょうか。
薬剤の配送であれば、ガソリン代や高速道路代、車両の維持費、ドライバーの人件費。
請求書に関して言えば、紙代やインク代、事務作業を行う従業員の人件費。
そして何より、医薬品卸に支払うアローアンスやリベートといった報酬。
上記の費用について、多かれ少なかれ削減できたのは間違いないはずです。
以上のことを踏まえて考えると、少なくともコスト面において取引卸は少ないに越したことはありません。
製薬会社にとって、その方が物流経費を削減できるワケですからね。
経営者の立場からしたら、物流に投じているカネ(=無駄と思われるコスト)を見直すのは当然のことです。
外資系の製薬会社における経営者は、日本の医薬品卸に対して懐疑的だと言われていますが…
ベック社長のような改革派が舵取りしているような会社では、今後も医薬品卸の絞り込みが行われていきそうです。
まとめ:今後も製薬会社による『医薬品卸の選別』は続くだろう
ここ数年ほどの製薬会社と医薬品卸の関係を見ていると、まさに『製薬会社が卸を選ぶ』という時代になったんだなぁと思わされます。
2019年にメディセオを含む複数の医薬品卸との取引を中止したノボノルディスクファーマ。
さらに、2021年に同じくメディセオを含む複数の医薬品卸との取引を中止したGSK。
GSKがメディセオ&地方卸との取引を打ち切る理由について考えてみる
GSKのMRはメディセオ&地場卸との取引中止についてどう思っているのか?
二度あることは三度ある
…という諺もあるくらいですから、今後も製薬会社による『卸切り』は加速していくでしょう。
4大卸の中では、奇しくもメディセオが2回も取引中止ターゲットになっていますが…
果たして、次はどこの製薬会社が、どこの医薬品卸を切るのでしょうか。
取引継続の決定権は製薬会社側にありますから、医薬品卸としては落ち着かない日々が続きそうですね。
その一方で、スペシャリティ医薬品だけに限定して1社流通を試みているメーカー&卸もあります。
米インサイト社の「ペマジール錠」はスズケン1社流通!スペシャリティ特化の物流戦略が凄い!
ゾルゲンスマの国内流通はスズケンが受託!スペシャリティ医薬品に特化したビジネスの真骨頂か?
『選ぶ側』である製薬会社と、『選ばれる側』である医薬品卸。
両者の力関係がここまで変わるなんて、まさに医薬品業界の過渡期ですね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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