こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
7月23日の日刊薬業に、日本ベーリンガーインゲルハイムが医薬品卸へのアローアンスについて見直す(減らす)という記事が載っていました。
具体的には、10月の消費税アップに伴い、ベーリンガーが医薬品卸に対してアローアンス・リベートの体系変更を説明しているそうです。
記事の内容がどこまで本当かは分かりませんが、医薬品業界の流れを見るに現実味のある内容だと感じています。
そこで本日は、ベーリンガーの動向や医薬品卸を待ち受ける未来などについて、個人的に思ったことを書いてみました。
アローアンスが減るのは当然のこと
昨年、ベーリンガーは500人規模のリストラを行っています。
そもそも、なぜリストラをするのか?
簡単にまとめると、会社としてコスト(人件費など)を削減したいからです。
さて、そのようなリストラを断行している製薬会社が社内コストだけを削減して、医薬品卸に払うアローアンスを削減しないのはおかしな話です。
会社としてコストを減らしたいなら、医薬品卸へのアローアンスも削るのは当然のことです。
製薬会社が医薬品卸に支払う『アローアンス』とは?医薬品業界の真実をお伝えします!
昨今は製薬会社も苦しい状況であり、医薬品卸に回すお金を捻出する余裕がないのです。
そもそも、こういった日刊薬業などのメディアに取り上げられないだけで、以前から多くの製薬会社が医薬品卸に対するアローアンス&リベートの見直し交渉をしています。
それだけに、今回ベーリンガーのアローアンス記事が大々的に取り上げられたことについて、何だかキナ臭いものを感じます。
日刊薬業の記事には、このようなことが書かれていました。
『ある卸関係者によると、7月上旬に日本BIの流通担当者から10月以降の取引についてアローアンスを付けない方針を口頭で伝えられたという。』
もしこの一文が本当のことなら、書面での正式契約には至っていないのでしょうが、たとえ口頭での伝達でも各医薬品卸にとっては衝撃だったことでしょう。
アローアンスを削るのなら、今度はリベートも削るという話が出てきてもおかしくありません。
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ベーリンガーはリストラという形で身を切るような改革をしています。
つまり、会社としては過渡期にあるわけです。
この機会に、コスト削減の一環で医薬品卸との関係を見直すことを狙っているのかも知れませんね。
卸ごとにアローアンスの差がある?
日刊薬業の記事では、ある大手卸の関係者が以下のようにコメントしています。
『4大卸の中でも、(ベーリンガーからの)アローアンスのあり・なしで差が出ている。』
例えば、卸Aはアローアンスをもらって儲かっているけど、卸Bはアローアンスをもらえず怒り心頭ということですね。
4大卸ということは、アルフレッサ・メディセオ・スズケン・東邦の4社ということになります。
果たして、どこの卸がアローアンスをもらっていて、どこの卸がアローアンスをもらっていないのか?
医薬品卸の元MSとしては気になるところです。
そもそも、製薬会社だって営利団体です。
決してボランティアで医薬品卸にアローアンスを払っているわけではありません。
ベーリンガー目線で考えてみると、
『この医薬品卸はウチのために良い働きをしてくれている。だったら、アローアンスを払ってやろう!』
『この医薬品卸はウチのために働かないくせして、アローアンスを寄越せと言っている。不愉快だ!』
…みたいな感じで、各卸の仕事振りをジャッジするのは当然のことです。
さて、アローアンスが発生する対象薬とは、大抵が生活習慣病の薬です。
ベーリンガーの生活習慣病の薬剤としては、『トラゼンタ』『ジャディアンス』『スピリーバ』あたりが有名ですね。
そして、『トラゼンタ(DPP4阻害剤)』の競合品と言えば、MSDの『ジャヌビア』、武田薬品の『ネシーナ』、ノバルティスの『エクア』などがあります。
ベーリンガーとしては、こういった競合品に力を入れて販促活動している医薬品卸にアローアンスを払うのは面白くありません。
『この医薬品卸はウチのトラゼンタの販促をしないくせに、ジャヌビアやネシーナばかり販促しやがって!』
『あー、面白くない!こんな医薬品卸にはアローアンスなんて払ってやるもんか!』
こんな具合に、ベーリンガーが腹を据えかねたとしても不思議ではありません。
むしろ、各卸と他メーカーとの関係性を見ているに違いないと思います。
もちろん、これだけでアローアンスが付く・付かないという話まで直結することはないでしょう。
しかし、製薬会社としてはアローアンスに関する1つの判断材料にはなり得るはずです。
医薬品卸がアローアンス云々で不満に思うのと同じように、ベーリンガーもまた医薬品卸に対して面白くない感情を溜め込んでいたのかも…?
アローアンスが減ると医薬品卸はどうなる?
医薬品卸にとって、アローアンスは収入源の1つです。
そして、ベーリンガーはそのアローアンスをカットしたいと考えている。
もしこのままベーリンガーがアローアンスをカットすれば、医薬品卸は収入源の一部を失い、会社の収益にも影響することでしょう。
日刊薬業の記事によると、ベーリンガーは『10月以降、アローアンスの体系を変更する。』と、取引のある全ての卸に説明しているそうです。
当然、医薬品卸としてはこれまで定期的に入ってきたお金が途絶えるのですから、今回のベーリンガーからの通達は完全なるバッドニュースです。
だから、医薬品卸は驚き、慌てているのです。
何としてでも、アローアンスのカットを避けたい。
自分たちの飯の種を減らしたくない。
つまり、医薬品卸としては由々しき事態なわけです。
ですが、ベーリンガーの姿勢を見る限り、アローアンスのカットは確定事項だという感じがします。
もし本当にベーリンガーがアローアンスをカットすれば、ベーリンガーに続いてアローアンスカットに走る製薬会社が次々と現れる可能性さえあります。
医薬品卸にとって、完全に逆風だということです。
アローアンスが減れば『詰め込み販売』も減るかも?
アローアンスが減ること自体は、医薬品卸にとって凶報です。
しかし、現場で働いているMSにとっては、ある意味 吉報 でもあります。
そもそも、アローアンスとは医薬品の販促活動における対価です。
もしベーリンガーがアローアンスをカットするなら、医薬品卸がベーリンガーの薬を販促する理由はなくなります。
その結果どうなるのか?
現場のMSがベーリンガーの医薬品を販促することはなくなるでしょう。
実際、日刊薬業の記事でも、
『アローアンスがなくなればMSが売らない、または動かなくなる。』
…との指摘がされていました。
私自身、元MSとして全くその通りだと思います。
『販促』と言えば格好良いように聞こえるかも知れませんが、実際には泥臭い仕事です。
その最たる例が、MSが月末ごとに開業医や調剤薬局にて行う『詰め込み販売』です。
『ベーリンガーのトラゼンタを、あと100錠だけ買ってください!』
『ベーリンガーのジャディアンスを、あと10万ほど買ってください!』
こんな風に、MSが取引先に頭を下げ、相手から嫌な顔をされながら買ってもらう仕事が『詰め込み販売』です。
これは凄まじく苦痛でストレスの溜まる仕事です。
しかし、MSは『詰め込み販売』から逃げることはできません。
MSがこんな行為をしているのは、医薬品卸が会社としてアローアンスを得るためです。
つまり、MSが行う『詰め込み販売』の根底には、製薬会社から医薬品卸へと支払われるアローアンスの存在があるのです。
繰り返しになりますが、ベーリンガーが医薬品卸へのアローアンスをカットするなら、現場のMSがベーリンガーの薬を販促する理由はなくなります。
いくら『トラゼンタ』や『ジャディアンス』を売っても、アローアンスが入ってこないからです。
この理屈で考えると、現場のMSがベーリンガーの薬について、『詰め込み販売』をする義務はなくなります。
もしそうなれば、現場のMSとしては『詰め込み販売』の負担が減るわけです。
そう考えると、MSにとっては必ずしも悪い話ではありません。
とはいえ、アローアンスが減った結果、医薬品卸の経営が苦しくなってMSの給料が削られる可能性もゼロではありませんが…。
まとめ:アローアンスの見直しは避けられない
製薬会社も苦しいこのご時世、アローアンスの見直しは既定路線です。
もし仮にベーリンガーが10月以降にアローアンスを減らさなくても、いずれ必ずアローアンスが見直される日は必ず来ます。
アローアンスが完全にゼロになるか、一部減額で済むのかはともかく、今以上にアローアンスが増えるなんてことは考えにくいです。
そして、他の製薬会社もベーリンガーのアローアンス方針の行方を見守っているはずです。
ベーリンガーが最終的にどのような決断を下すかによって、医薬品卸の未来をある程度予想できそうですね。
今後もベーリンガーの動向には注目していきたいと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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