こんにちは、元MSのヒサシです。
私がMSとして働いていた頃、愛社精神がすごく強い先輩MSがいました。
同じ営業所の先輩だったのですが、それはもう自社への愛着ぶりが凄かったんですよね。
その先輩MSは新卒で医薬品卸に入社して以降、15年以上もMSとして働いている“現場の叩き上げ”みたいな人です。
当時30代後半であり、次期管理職とも呼ばれている人でしたし、MSとしての知識や経験も抜群でした。
(※実際、その先輩MSは後に管理職へと抜擢されています。)
そして、その先輩MSは転職経験が無いにも関わらず、なぜか『ウチは良い会社だ!』と断言して憚らない人でもありました。
一応、断っておきますが、私はその先輩MSのことが嫌いだったワケではありません。
能力的にも優れているMSだったと思いますし、その先輩MSには仕事のやり方などについて、私も色々と指導してもらいました。
よって、基本的には今でも感謝している人なのですが…
その先輩MSについて、どうしても腑に落ちない部分があるんですよね。
他社で働いた経験が無いのに、なぜ自社は素晴らしいと言い切れるのか?
…という点です。
先輩MSの“自社への絶賛発言”に対して、MS時代の私はものすごく違和感があったんですよね。
他の会社で働いた経験を踏まえて、前職と現職を比較した上での発言であれば、私も理解できます。
前職よりも給料が良いとか、福利厚生が良いとか。
今の会社に転職したら、生活の質が向上したとか。
そういった経験談があれば、先輩MSの言葉にも説得力が増すと思うのですが…
残念ながら、先輩MSにはそういった経験が無い。
…にも関わらず、なぜか『ウチは良い会社だ!』と言って譲らない。
何なら『こんな良い会社を辞めるヤツはおかしい!』とでも言わんばかりの語り口。
愛社精神が強いと言えばそれまでですが、ちょっと極端すぎるような気がしないでもない。
そんな先輩MSに対する違和感について、当時の体験をもとに記事を書いてみました。
(※これ以降は愛社精神が強い先輩MSのことを“Aさん”と書かせていただきます。)
常日頃から会社を称賛する先輩MS
私がMSとして働いた期間を振り返っても、Aさんは常に自社を褒めるようなことを言っていたと思います。
それだけではなく、私を含む後輩MSたちにも、自社の素晴らしさを説くような場面が沢山ありました。
特に酒の席では、後輩を掴まえては会社の美点について力説していたような気がします。
今思えば、どちらかと言うと酒癖が悪いタイプだったかも…
私が新入社員だった頃から、Aさんからは以下のような言葉を頻繁に聞かされたものです。
とにかく、自社への愛着ぶりがすごい。
ここまで自社を褒めるような先輩MSは、ちょっと他にはいなかったです。
まあ、新人MSだった頃はAさんの言葉にはそこまで違和感はなかったです。
…と言うより、Aさんの言葉の意味について深く考えることが無かったというか。
Aさんが言う通り、ウチの会社はきっと良い会社なんだろうなぁ~
…みたいな感じで。
でも、MSとして3年、4年、5年と働き続けるに従って、私はAさんの言葉に対して不信感を抱くようになっていきました。
会社の悪口を全く言わないAさん。
それどころか、会社の美点のみを高らかに語るのみ。
誰がどう見ても会社の方針がおかしいという場面においても、Aさんは『この会社は正しい』と言い切ることさえありました。
もしかしたら、後輩MSの前ではネガティブな発言をしないように心掛けていたのかも知れません。
本当は会社に対して不満があるけど、Aさんは敢えて口に出さないように意識していたのかも知れません。
しかし、もしそうだとしても少しばかり自社のことを称賛し過ぎじゃないだろうか。
愛社精神という言葉で片付けるには、ちょっと過剰ではないだろうか。
Aさんには大変申し訳ないのですが、ある種の“宗教臭さ”みたいなものが滲み出ているというか。
そんな風に違和感が拭えず、私はAさんの愛社精神に対して悍ましさみたいなものを感じるようになっていきました。
自社を“良い会社”と言い切る根拠とは?
この記事の冒頭で書いた通り、Aさんには転職経験がありません。
新卒で医薬品卸に入社して以降、MSとして営業畑のキャリアを積んできた人です。
そんなAさんに、私は『なぜウチのことを良い会社だと思うんですか?』尋ねたことがあります。
確か、MSとして5年目くらいの時期だったと思います。
(※当時、私はMSとして働き続けることに限界を感じ、頭の隅で転職することを考え始めた時期でもありました。)
そしてAさんから返ってきた返事はこんな感じです。
あまりにもAさんがニコニコしながら語るので、このときのことは鮮明に覚えています。
このAさんの返事を聞いて、私はAさんの意見を参考にするべきではないと思いました。
あまりにも根拠が曖昧というか、主観的すぎるというか…
いや、人間の意見なんて主観的になるのが当たり前ではあるのですが…
Aさんが言うところの“良い”とは、あくまでAさん以外の人たちからの伝聞なんですよね。
少なくとも、Aさん自身が他社で働いてみた経験と照らし合わせてみた末の意見ではない。
社内で働いている誰かの発言の中から“良い部分”だけを抜き出し、それらを繋ぎ合わせてみただけ。
正直言って、私はそのような印象を受けました。
実際のところ、自社と他社との違いについて、Aさんは数字などを用いて説明できるワケではない。
給料・福利厚生・年間休日などについて、客観的な視点から語れるワケでもない。
平たく言えば『感情論』なんですよね。
詰まるところ、Aさんは自社のことが好きだからこそ、このように前向きな解釈が出来るのではないか。
嬉々として会社の美点を語るAさんに対して、私は自分でも驚くほど冷静でした。
今思えば、可愛げのない後輩MSだったと思います…
他社で働いたことがない人間が、どうやって自社と他社を比較するというのか。
ましてや、そのような人間がどうして自社は他社よりも“良い会社だ”などと言い切れるのか。
新卒で入社して以降、営業畑で15年以上もキャリアを積み、次期管理職として期待されているAさん。
社内的には、まさに出世コースに乗っている人です。
営業としての自信に溢れ、知識に長け、十分な経験を備えている人材。
その反面、実は社外のことには疎いのではないか。
1つの会社でしか働いたことがない(=他社の労働環境を知らない)という意味では、もしかすると“世間知らず”なのではないか。
当時20代後半だった私は、そう思わずにはいられませんでした。
愛社精神の押しつけ
Aさんの良くない点として、後輩MSに自分の愛社精神を押し付けがちなところがあったんですよね。
特に酒の席では、その傾向が顕著でした。
酔っ払ったAさんの口から、このような言葉を何度聞いたか分かりません。(汗)
Aさんが自社に愛着を持つこと自体は別に構いません。
どういった経緯でAさんの心に愛社精神が芽生えたのかは知りませんが、自分の中にある愛社精神を大切だと思うのなら、とことん大切にしたら良いと思います。
ですが、他人に対してまでその価値観を押し付けるのは良くないと思います。
まず大前提として、会社と社員との間には“相性”というものが存在します。
恋愛や結婚と同じで、合う・合わないは人それぞれなんですよね。
Aさんにとっては良い会社でも、他の人にとっては違う。
ともすれば、この会社を明日にでも辞めたいと思っている人だっているかも知れない。
万人から好かれ、愛される会社なんて、この世には存在しない!!
…と、私なんかは思っているのですが、Aさんはこんな風には思わないのでしょうね。
そもそも、愛社精神とは自然と芽生える感情ではないでしょうか?
少なくとも、誰かから押し付けられて芽生えるような感情ではない。
Aさんの言動を振り返ってみて、今ではそのように思います。
去る者には厳しい態度
こんな記事を書いている私自身、結局のところ新卒で入社した医薬品卸を辞めて転職しています。
一応、それまで働いていた医薬品卸について、決して悪い会社だとは思いませんでした。
しかし、悪くはないけど良くもない。
MSだった頃、私はそのように思っていました。
生命関連商品である医薬品を扱うことから、景気に左右されにくく、他と比べたら安定している業種。
それ自体は間違っていないと思う反面、MSとしての仕事内容や待遇などに不満があったことも事実です。
医薬品卸のMS(営業職)として働いていた頃の年収を1円単位まで公開します!
元MSの本音!医薬品卸のMSを辞めたいと思った理由について語る!
…で、転職するという選択肢についてとにかく考えてみました。
それはもう、これ以上考えるのもイヤになるくらい考えました。
自分の人生ですから、今後の身の振り方について真剣に考えるのは当たり前のことです。
そうやって考えに考え抜き、自分なりの結論に辿り着いたワケです。
…といった具合に考えた末での転職でした。
でも、Aさんとしては私が苦心して出した結論(決断)について、お気に召さなかったようです。
退職の意志を伝えたとき、Aさんからは色々と辛辣な言葉をぶつけられましたからね。(汗)
一言でまとめると、Aさんは私に対して『この裏切り者め!』という意味合いの言葉を連発したんですよね。
去る者には厳しい言うか、何と言うか…
Aさんに限った話ではないですが、私は医薬品卸を辞めるとき、各方面から色々なことを言われました。
医薬品卸を辞めると表明したときの上司・先輩・後輩の反応について実体験を語る!
退職という節目だからこそ、その人間の本性が浮き彫りになるというもの。
私はこのとき、会社を辞めるときに裏切り者扱いされるというのは、まさにこういったことなのだと身を以て体感しました。
私としては“裏切る”という感覚は一切なかったのですが…
とりわけ、Aさんは愛社精神が強いタイプでしたからね。
Aさんの目線では“目をかけてやった後輩に裏切られた”と感じたのかも知れません。
強すぎる愛社精神は、場合によってはこういったマイナスの感情も生み出してしまうのでしょう。
Aさんの態度や言動から、今ではそのように思っています。
考察:愛社精神が強い人の特徴
Aさんに限ったことではないのですが、なぜ社内には強い愛社精神の持ち主がいるのでしょうか?
そもそも、愛社精神が芽生えるのはなぜか?
Aさんはどのようにして強い愛社精神を持つに至ったのか?
…ということについて、少しばかり考えてみたいと思います。
多分ですが、Aさんのようなタイプは社内で順風満帆なキャリアを歩んできたことが、会社に対する気持ちに大きく関与しているのではないでしょうか?
元々の能力に加えて、たゆまぬ努力によって結果を出し、さらには人間関係にも恵まれる。
年齢と共に役職は上がり、年収も右肩上がりとなり、上司からの信頼も厚くなる。
仕事にやりがいを感じ、次期管理職として期待され、自己肯定感が上昇していく一方。
その過程で、強烈な愛社精神が形成されてきたのかなぁ…と、私なんかは思うのです。
なるほど確かに、こういったタイプの人なら会社に対して恩義を感じていそうですね。
新卒で入社して以降、順調にステップアップしているとしたら尚更でしょう。
それであれば、Aさんのように自社に対して愛着が湧くのも理解できます。
もし仮に会社に対して不満があったとしても、それを帳消しにするだけの好感を持ち合わせているのでしょうね。
それはそれで良いことだと思います!
しかし、その一方で社内にて不遇を強いられている人間の気持ちについては、イマイチ理解できないのではないでしょうか?
会社というのは相対的な評価をされる場でもあります。
よって、高評価な社員もいれば、低評価な社員もいます。
高評価といえば、まさにAさんのようなタイプが該当するのでしょう。
しかし、低評価な人間の心情や境遇について、Aさんみたいな人が100%理解できるかと言ったら、ハッキリ言って無理だと思います。
優秀であるが故に、優秀ではない人間の気持ちを理解できない。
これが優秀とされる人における落とし穴ではないかと。
製薬会社で例えるなら、本社と現場の間に存在しているような『溝(みぞ)』があるワケです。
製薬会社の現場と本社における埋まることのない『溝』について語ってみる
私もMS時代に経験があるので分かるのですが、社内で低評価(=優秀ではない)という烙印を押されたら凹みます。
少なくとも、会社に対して愛着・恩義・好意といったプラスの感情を抱くのはちょっと無理です。
つまり、愛社精神なんて感情は心に芽生えてこないワケです。(汗)
しかし、Aさんのようなタイプにはこの現象が理解できない。
そんな気がしないでもないです。
まとめ:過剰な愛社精神が“世間知らず”を生み出す…かも?
この記事を通じて私が言いたいことは、転職の良し悪しではありません。
私が言いたいのは『転職経験がない人間の言葉をどこまで信じるべきか?』ということです。
転職したことがない人間が、自社を絶賛し、他社のこと貶す。
これについては、何度考えても不自然な感じがするんですよね。
とりわけ、この記事で紹介したAさんのようなタイプには違和感を禁じ得ません。
複数の会社で働いた経験があって初めて、自社と他社を比較した意見に説得力が生まれると思うのです。
…にも関わらず、感情論によって自社を称賛するのは如何なものか。
他社の労働環境を知らないのに、他社を貶めるような発言をするのは如何なものか。
愛社精神に起因する発言であったとしても、その愛社精神によって客観的な視点を欠いているのではないか。
ある意味、Aさんのようなタイプは“世間知らず”なのではないか。
今ではそのように思ったりしています。
愛社精神が強すぎると、ちょっとした盲目状態に陥ってしまうのかも知れませんね。
ただ、一応補足なんですけど、私はAさんの生き方まで否定しているワケではありません。
愛社精神を大切にすること自体は悪いことではありません。
むしろAさんのような愛社精神溢れるタイプが羨ましいと思うこともあります…
それに、新卒で入社した会社で仕事を頑張り、同じ会社で栄達していくのも1つの生き方です。
私自身は転職を経験している人間ですが、転職という手段が必ずしも人生に好影響を与えるとは限りません。
なぜかと言うと、転職にリスクは付き物だからです。
極端なことを言えば、転職を機に人生が転落気味になる人だって大勢います。
MSからMRに転職したけど職場環境に馴染めなくて辞めていった後輩の話
もしAさんのように社内でのキャリアが順調な人であれば、敢えて転職する必要もないと思います。
誰に何と言われようとも、自分自身が満足できるキャリアを歩めるのなら、それで良いのではないでしょうか。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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