こんにちは、元MSのヒサシです。
本日、とある医薬品卸の中堅MS(以下、Aさんと記載)から【出荷調整】の過酷さについて、色々な話を聞く場面がありました。
医療機関への相次ぐ案内。
MRからの連絡不行き届き。
割当品を巡っての社内論争。
私自身も昔はMSとして働いていただけに、その深刻さが身に染みて伝わってきました。
かくいう弊社も、実は1品目だけ出荷調整中の薬剤があるのですが…
その件を含めて、とにかく現場のMSは疲弊しているそうです。
特に、若手MSの疲弊感は半端じゃないらしい。
Aさん曰くですが『こんな状況なので若手MSのメンタルが心配なんです』とのこと。
Aさんとしては、若手MSが出荷調整に嫌気が差して辞めるのではないかと心配なようです。
特に、2020年~2022年に入社した新人MSたち。
彼らは現場配属と同じタイミングで、出荷停止&出荷調整の嵐に巻き込まれています。
それこそ、もしかしたらMSとしての最優先業務は出荷調整品に関する対応だと思っている可能性すらあります。
(※実際、出荷調整とは薬の安定供給に直結する要素であり、MSにとっては無視できない仕事である)
その上、取引先から出荷調整品を寄越せという圧力も強いときた。
我儘な取引先は、出荷調整なんてお構いなしに発注してきますからね…
営業の経験が浅いMSにとっては、何かと辛い局面でしょう。
このような状況では、MSのみならず医薬品卸自体を辞めたいと思う若手が増えたとしても不思議じゃないです。
そこで、本日は若手MSと出荷調整の関係性について記事を書いてみました。
MSにとって出荷調整の業務は有害無益!?
もうこの際だからハッキリ言いましょう。
MSにとって出荷調整絡みの仕事って大変なんですよ。
そりゃあもう、マジで、本当に。
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社内・社外を問わず、MSとしてやるべきことが沢山あります。
取引先への連絡だったり、代替品の確保だったり、その他諸々。
とにかく、1品目だけでもMSの手を煩わせるのが出荷調整というイベントです。
しかも、現在は次から次へと出荷調整が相次いでいる状態です。
後発品のみならず先発品まで続々と出荷調整されるとか、業界史上稀に見る出来事なんですよね。
日医工や小林化工といった後発品の製造過程にて欠陥を指摘されたメーカーのみならず、まさか先発品を扱っているメーカーにここまで飛び火してくるとは完全に予想外でした。
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私自身も自社品の中から出荷調整となる薬剤が現れるとは思っておらず、昨今の出荷調整問題には驚かされるばかりです。
…で、この問題の皺寄せを受けるのがMSなんですよね。
出荷調整が生じるとMRも大変ですが、MSはもっと大変です。
知り合いのMS数名から話を聞く限りでは、出荷調整に関する彼らの業務量はマジで半端じゃない。
これだけは間違いないです。
しかも、MSにとって出荷調整に関する仕事は“やって当たり前”の仕事です。
売上や利益を伸ばすといった、営業的な仕事とは毛色が異なるのです。
たくさん出荷調整関係の仕事をこなせばMSとしての評価(査定)が良くなるわけでもない。
頑張ったからといって給料が上がるわけでもない。
ましてや、昇進が早くなるわけでもない。
なぜかと言うと、先述した通り出荷調整の仕事とはMSにとって“やって当たり前”だからです。
ありていに言えば、会社目線では評価するに値しない類の仕事なんですよね。
そのくせ、出荷調整に関する仕事を疎かにしていると取引先からクレームが来たり、上司から怒られたりする。
MSにとっては理不尽なことの連続なのです…
いかがでしょうか?
言葉は悪いですけど、MSにとっては有害無益とも呼ぶべき業務なのです。
“不満のはけ口”としてMSに辛く当たる取引先は多い
先ほど出荷調整の業務はMSにとって有害無益だと書きましたが、その最たる理由は取引先に起因するものです。
元MSとしてはよ~く分かるのですが、取引先によっては狡賢い先もあるんですよね…。
出荷調整がかかった途端、卸内にある在庫を買い占めようとしたりとか。
あるいは、出荷調整であることを告げた途端に『ふざけるな!何とかしろ!』などとMSにキレたりとか。
凄く大人気ないんですが、MSのことを“不満のはけ口”にしてくるワケです。
MS時代に体感した“厄介な取引先”の特徴5選!彼らの悪意に振り回されてはダメだ!
信じられないと思うかもですが、こういった取引先って結構多いんですよね…。
少なくとも、私がMSとして働いていた頃はそうでした。
もちろん、出荷調整の事情を理解してくれる優しい取引先もいますが…
常日頃からクレーマー気質な取引先と向き合っていると、MSは確実にメンタルを消耗します。
実際、記事の序盤で登場したAさんもメンタル面では相当参っているような印象を受けました。
こういったクレーム的な出来事について、一度や二度くらいなら大したことないと思うんですよ。
ですが、MSとて生身の人間です。
耐えられるストレスには上限があります。
クレーム案件が10回や20回も繰り返されるようなら、MSのメンタルが徐々に弱っていくのは必至です。
おそらく、余程メンタルが強い人でない限り、大なり小なりダメージを受けるでしょう。
こんな日常を延々と繰り返されるのだから、現状に嫌気が差すMSは多いのではないでしょうか。
ましてや、2020年~2022年に入社したMSは、現場配属と同時にこういった環境を強いられているワケですからね…。
出荷調整時の業務について何のノウハウもないまま、取引先からの圧力に苦しむ毎日。
ハッキリ言って気の毒過ぎます。
Aさんではありませんが、これでは若手MSが仕事を辞めたいと思うのも無理ないです!(汗)
出荷調整時はMRの対応にも問題がある!?
先ほど、弊社で1品目だけ出荷調整の薬剤があると書きました。
実はですね、私はその薬剤を納めているMS(卸)には、その全員に事情説明の電話をしています。
とりわけ、納品量が多い施設を担当しているMSについては、こちらから卸の営業所に出向いて今後の流れについて直接案内したりとか。
何だかんだ言って、直接会ってコミュニケーションする方が話が早いですからね
まあ、説明や案内とは言っても、私がMSに対してまず行ったのは謝罪です。
…みたいな感じでMSにお詫びしつつ、今後の対応について話し合うって感じですね。
出荷調整とは、詰まるところ医薬品卸側ではなく製薬会社側の事情によるものです。
需要と供給のバランスを考えて、製薬会社が医薬品卸への出荷量を調節しているワケですからね。
つまり、会社 対 会社で考えたときに、医薬品卸は悪くないんですよ。
じゃあ製薬会社が全面的に悪いのかと言うと、それもちょっと違うのですが…
ただ、少なくとも製薬会社の都合によって、医薬品卸への皺寄せが発生しているのは事実なワケでして。
だから、平たく言うとMSを含む医薬品卸側は“被害者”なんですよね。
こういった流通事情を考えたときに、製薬会社に属しているMRとしてはMSに対して誠意を持って接するべきだと思うのです。
…が、上記の流通事情を知った上で、出荷調整関係のことはMSに丸投げするようなMRもいるんですよね。
私の先輩MRなんかは特にそうです。
例えばですが、下記のようなことを平気で言うような人もいます。
これは確かにMRの業務効率という意味では一理あります。
でも、社会人としてのモラルという意味では、果たしてどうなんですかね…。
元MSだった私に言わせれば、MRから何らかの一言があるだけでもMS側の心象は相当変わるんですけどね。
簡単かつ手軽!MRがMSを味方に引き込むためのフレーズ5選!
ただ、上記のようにドライなMRが存在することは確かです。
こういった形でMRが“だんまり”を決め込んでしまうと、それはそれでMSにとってはストレスなんですよね。
出荷調整で大変な状況なのに、なぜMRは自分のところに連絡の1つも寄越さないんだ?
…みたいな感じでね。
若手MSなら尚更のこと、MR(製薬会社)の事情が分からずに混乱するでしょう。
そして、余計にストレスを溜め込むという事態を招きそうです。(汗)
こういったMRからの対応を含め、若手MSが辞めたがるという素地へと繋がっていくのかも知れませんね。
最後に:出荷調整のせいでMSが辞めたとしても不思議ではない
2020年~2022年に入社した若手のMSにとって、出荷調整のせいで今は本当に辛い時期だと思います。
しかも、この出荷調整が落ち着く気配は今のところないワケですし。
これもAさん曰くですが『来年になれば出荷調整もなくなるだろうから、それまでは一緒に頑張ろう!』と胸を張って言えないのが辛いのだとか。
そりゃそうです。
2023年になれば出荷調整が落ち着くなんて保証はどこにもないのですから。
この状況が2023年や2024年も続くのだとしたら、それこそ若手MSでなくても仕事に対するモチベーションを維持するのが難しくなりそうです。
加えて、若手MSは転職しようとすれば“第二新卒”として扱われるでしょうから、退職を決断するための精神的ハードルも低そうです。
医薬品卸にMSとして入社したら3年は働くべきか?【読者さんからの質問】
ただ、もし出荷調整という1点のみの影響でMSを辞めるとしたら、それはそれで勿体ないような気もすると言うか…。
まあ、仕事を辞める・辞めないの判断はその人次第なんですけどね…
それでもやっぱり、出荷調整のせいで若手MSの離職が進むとしたら、それはちょっと残念な気もしますね。
もしMSとして働く醍醐味について、まだ知らないようであれば尚更です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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