こんにちは、元MSのヒサシです。
MS時代に最も苦戦した施策として、大正製薬の『鷲友会』というものがあります。
当時、大正製薬のプロモーターをしていたこともあり、上記の鷲友会には幾度となく苦しめられました。
…と言うのも、施策としての難易度のみならず、鷲友会に関するプロモーター会議というものが毎年12月にあったんですよね。
その名の通り、大正プロモーターは強制参加です。
当然、欠席なんて許されません!!(汗)
会議とセットで開催される飲み会と相まって、私にとっては悩みのタネでした。
そんな大正製薬のプロモーター会議ですが、参加する面子は以下の通りです。
私のエリアの場合、総勢で10名ほどの規模だったんですよね。
この人数が多いか少ないかはさて置き、プロモーター会議~飲み会に至るまでの一連の流れについて、私にとっては苦痛でしかありませんでした。
しかも、この苦痛の源について深堀していくと、その根底には『メーカーに甘える卸の浅ましさ』が潜んでいるんですよね。
その事実が、当時の私にとっては堪らなく不愉快だったのです。
総じて、まさに医薬品業界における“悪習”と呼ぶに相応しい出来事だったように思えます。
…ということで、当時の体験談について記事化してみました。
MSを辞めた今だからこそ、忖度なしで本音をブチ撒けていきます!!
毎年12月に大正製薬オフィスで開催されるプロモーター会議
私が働いていた地域では、毎年12月になると県内の大正プロモーターをやっているMS+その上司(所長・部長)が大正製薬のオフィスに集まり、雁首並べて会議をするという謎の風習(?)がありました。
俗に言うプロモーター会議というヤツです。
これには大正製薬による超ヘビー級施策である『鷲友会』が関わっています。
MS時代に大正製薬の超難関施策『鷲友会(しゅうゆうかい)』で苦しんだ体験談
詳しくは上の記事を見てほしいのですが、鷲友会は毎年1月~2月にかけて行われます。
付け加えると、鷲友会では尋常ではないノルマがMS・MRの双方に課せられます。
そして何より重要なのは、この鷲友会という施策は“未達成で終わることは絶対に許されない”という事実です。
よって、鷲友会が始まる前の12月の時点で、卸としては大正MRと綿密な行動計画を立てておく必要がある。
…というのが、私が新人MSだった頃に上司から教えられたプロモーター会議を行う理由です。
そんなプロモーター会議の内容ですが、それほど難しい内容を話し合うワケではありません。
今回の鷲友会で詰める品目は何か?
それらの品目をどの施設でどのくらい詰める必要があるのか?
これらの事柄について、大正MRが用意した積み上げ表を供覧しながら打ち合わせするのです。
言ってみれば、大正プロモーターと大正MRによる『詰めの確認作業』ですね。
毎年恒例の鷲友会シーズンになったから、今回もお互いに協力して頑張ろうぜ!
…みたいな雰囲気が強い会議なのです。
よって、本内であれば電話やメールで済ませても良いような案件なのですが…
なぜか私のエリアでは、先述したようなプロモーター会議が毎年開催されるという奇妙な風習があったんですよね。
ある意味、12月の伝統行事と言っても差し支えないような雰囲気すらありました。
(※なぜこんな風習が生まれたのかは後述します。)
実際のところ、鷲友会における『詰め』の作業は困難を極めます。
詰めのためにわざわざプロモーター会議を行うのも仰々しい気がしますが、MSと大正MRとで詰めに関する目線共有などが出来るのであれば、それに越したことはありません。
このブログ内で幾度となく述べてきた通り、MSにとって詰めの仕事は大変だからです。
私個人に関して言えば、MSの業務の中で『詰め』が一番嫌いでしたけどね!
医薬品卸のMSを苦しめる『詰め込み販売』とは?元MSが業界内の悪習を暴露します!
私を含めて、大正プロモーターとて一介のMSに過ぎません。
そして、詰めの仕事を嫌っているMSは数多くいます。
…というワケで、鷲友会(=大量の詰め)に消極的なMSの尻を叩くという意味で、このようなプロモーター会議というイベントが生まれたのでしょう。
ただし、それはあくまで建前でしかありません。
卸のMS+その上司たちが、わざわざ大正製薬のオフィスまで出向く真の理由。
それはさらに別のところにあります。
本番はプロモーター会議後の“飲み会”
先ほどお伝えしたプロモーター会議についてですが、実は毎回1時間ほどで終了となることが殆どでした。
18:00前後には大正オフィスに集合し、19:00を過ぎるころにはお開きになる。
では、その後はどうなのか?
その場で現地解散か?
いやいや、決してそんなことにはなりません!
プロモーター会議の後は、その会議に出席していたメンバー全員で飲み屋へと移動します。
しかも安居酒屋などではない、かなり格式高そうな飲食店です。
もうこの際ですからハッキリ言いましょう。
プロモーター会議の終了後、卸+大正製薬のメンバーによる“飲み会”こそが本番なのです!
私がMSとして働いた5年間だけでも、和食・洋食・中華など様々な店に連れて行ってもらいました。
どれもこれも、全て大正製薬による奢りです。
(※さすがに大正製薬も自腹を切るワケではなく、経費で支払っていたようですけど。)
つまり、卸サイドの出席者は全員が自己負担0円で飲み食いするというワケです。
詰まるところ、メーカーの金でタダ飯を食べる卸軍団といった構図ですね。
これこそまさに、メーカーと卸における悪習の一端である!
さて、私個人としてはプロモーター会議後の飲み会は大嫌いでした。
この飲み会の趣旨とは、表向きは卸と大正製薬とで親睦を深めるところにあります。
…が、それはあくまで建前です。
この飲み会の本質とは『鷲友会を遂行する見返りとして自分たち(卸)に美味いメシと酒を奢れ!』という卸サイドの身勝手な要求に他なりません。
理屈としては、説明会などでMS(卸)がMR(メーカー)に弁当の奢りを求めるのと似たようなものです。
説明会などの場面でMRに弁当をねだる『身勝手なMS』について思うこと
これも医薬品卸あるあるの1つですが、卸の人間(特に中年以降の世代)が何らかの見返りとして、製薬メーカーにタダ飯を要求するのは日常茶飯事です。
とりわけ鷲友会のような難関施策であれば、卸からメーカーへの要求レベルも跳ね上がるというもの。
その証拠に、私(MS)から見れば上司ですけど、大正製薬との飲み会における卸の管理職軍団のホクホク顔ときたら憎たらしいくらいでしたからね。
また別の証拠としては、プロモーター会議の朝に上司から『本日のプロモーター会議の後は、大正さんに美味しいお酒を飲ませてもらいましょう』という一文付きのリマインドメールが送られてきましたからね。
これは決して嘘なんかではなく、私自身が経験した実話です。
こんな乞食みたいなメールを部下宛に流すなよ…
他人(メーカー)の金で食べるメシ。
他人(メーカー)の金で飲む酒。
これらについて、私の上司たちは待ち遠しくて仕方ないという感じでした。
もうね、この一連の流れそのものが私にとっては馬鹿馬鹿しくて仕方なかったんですよ。
時間の無駄。
いや、人生の無駄。
おまけに上司たちの価値観は狂っている。
MSだった頃、私は心の底からそのように思っていました。
確かに料理は豪華だし、MSの安月給では絶対に入れないであろう店で食事することに関して、今思えば悪くない人生経験だったとは思います。
でもね…上司たち+大正製薬の人たちに囲まれて食べる料理なんて、ちっとも美味しくなかったんですよ。
自分でも不思議なくらい料理や酒の味が思い出せない…
大正プロモーターという立場上、この親睦会に欠席することは許されない。
とはいえ、腐っても上司の前ですからMSとしては気を遣うときた。
その一方で、大正製薬の所長&MRの手前、仏頂面をしているワケにもいかない。
その上、卸の上司陣は『こんな美味い酒を飲ませてもらったんだから、今年の鷲友会もMSにしっかり遂行させますよ!』などと抜かしやがるではないか。
取引先に頭を下げて『詰め』を行うのはMSであり、上司たち自身ではないというのに。
その上司たちにしても、昔はMSとして働いていたのだから、鷲友会の辛さを知っているはずなのに。
一体、どういった了見でこんな発言をしているのだろうか。
すぐ隣にいる大正プロモーター(現役MS)にとって、この上なく不快な発言であることについて想像が及んでいないということなのか。
あるいは、自分たちが過去に鷲友会で苦労した分だけ、大正製薬からタダ飯を奢ってもらうのは当然の権利だとでも思っているのだろうか。
とにかく…
この飲み会の最中、卸の上司たちに対する嫌悪感ときたら半端じゃなかったです。
私にとっては鷲友会そのものもイヤでしたが、鷲友会をダシにして大正製薬にタダ飯を奢らせる上司陣はもっと気に食わなかったです。
大正オフィスでのプロモーター会議が終わったのなら、その場からさっさと解放して欲しい。
飲み会なんて、やりたい奴だけでやれば良いではないか。
どうせ鷲友会は失敗なんて許されないのだから、大正製薬との飲み会の有無に関わらず、MSとしては逃れる術なんてない。
仮にタダ飯を奢ってもらったところで、現役MSにとって鷲友会に対する忌避感が払拭されるはずもない。
こんな飲み会を開催したところで、大正製薬との親睦を深めるどころか、溝が深まるだけではないのか。
大正プロモーターかつ現役MSとして、当時の私はそのように思わずにはいられませんでした。
大正MRが欠席することの裏事情
プロモーター会議後+その後の飲み会について、大正製薬のMRが欠席することも珍しくなかったです。
大正製薬の所長は会議~飲み会まで必ず参加するものの、卸の窓口役をやっている大正MRの欠席率はそれなりに高かったように思えます。
…というのも、このプロモーター会議は毎年12月に開催されます。
12月と言えば、忘年会シーズンですよね。
その他だと、12月の上旬にはMR認定試験だってあります。
よって、卸での窓口MRをやっている人たちのうち、取引先の忘年会やMR認定試験との予定が被っていれば、そちらを優先するのは当然のことです。
先ほど述べた通り、プロモーター会議も、飲み会、そんなに大した内容ではありません。
むしろ、MRにとっても時間と労力の無駄でしかない。
特に飲み会なんて、大正MRからしても卸の人間たちを“おもてなし”するのは苦痛でしかないでしょうし。
MSという立場で飲み会に参加していた私ですら『こいつ等(卸の上司たち)の顔を見ながら食べる高級料理よりも、1人で食べるコンビニ弁当の方が100倍美味い』と本気で思いましたからね。
それならば、現場のMRとしては取引先の忘年会なりMR認定試験なりを優先した方が良いに決まっています。
大正製薬の所長にしても、十中八九このような考え方をしていたはずです。
だからこそ、部下であるMRたちの欠席を黙認していたのではないかと思われます。
まあ、MRの上司としては妥当な判断だと思うよ…
私がMSとして働いた5年間の中で、自分の営業所の窓口をしてくれている大正MRが欠席したことは2回ほどありました。
ですが、その2回に関して私個人としては特に腹立たしいとは思わなかったんですよね。
(※卸の上司たちは不服なようでしたけど。)
今では私もMRをやっているので、当時の大正MRたちの気持ちがより一層深く理解できるのですが…
『俺たちにタダ飯を奢れ!』などという空気を漂わせている卸の人間たちと一緒に食事するなんて、MRにとっては苦痛なだけですからね。
そんな下らない飲み会に出席するくらいなら、MRとしての本来業務に集中するのが吉ってもんです。
最も辛かったのは大正製薬の所長だと思う
現場のMRであれば、取引先の忘年会・MR認定試験を理由にして、プロモーター会議+飲み会を欠席する大義名分が立ちます。
しかし、大正製薬の所長だけは違います。
曲がりなりにもプロモーター会議という名目で大正オフィスに卸の人間たちを招待している関係上、大正製薬側の責任者である所長が欠席するワケにはいきません。
その後で開催される飲み会についても、大正製薬の経費で支払うことから所長の参加は必須です。
そう考えると、この一連のイベントにおける最大の“貧乏クジ”を引いていたのは、大正製薬の所長だったのではないかと思えるのです。
特に飲み会の場面において、卸の管理職軍団を“おもてなし”するのは、大正製薬の所長にとって苦痛でしかなかったはずです。
当時の私の上司たちは『酒をたくさん飲めるヤツが偉い』とでも言わんばかり人間でしたからね。
大正製薬の奢りであることも相まって、飲み会の最中はメチャクチャ盛り上がるのが常でした。
その傍らで、俺は彼らのことを冷ややかな目で見ていたけどな!
そんな卸の飲兵衛たちを“おもてなし”する大正製薬の所長。
その心中は、きっと穏やかでなかったことでしょう。
…と言うか、飲み会中にふとしたタイミングで、大正製薬の所長の表情が曇るような場面も結構ありましたからね。
それで私はピンときました。
ああ、この人も本音ではプロモーター会議+飲み会について嫌気が差しているんだな…とね。
多分ですけど、大正製薬の所長はこんな感じのことを思っていたのではないでしょうか。
表面上は卸に対して“おもてなし”の態度を取っていても、細かな表情の変化からはこのような心情が読み取れました。
言葉には出さずとも、目は口程に物を言いますからね。
しかしながら、卸の人間たちに対してこのような本音の部分を明かすワケにはいかない。
だからこそ辛いという気持ちがあったのではないでしょうか?
まとめると、大正製薬の所長にとっての葛藤は根深かったことでしょう。
余談:コロナ禍でのプロモーター会議事情
私がMSを辞めた後、大正プロモーターの役目は後輩MSに引き継がれました。
その後輩MSとは今でもたまに連絡を取り合うような仲なのですが、2020年以降はコロナ禍によって、大正製薬のプロモーター会議そのものが休止状態となったそうです。
当然、プロモーター会議後の飲み会も開催されていません。
これは製薬メーカーからすれば当然のことで、たとえ卸の人間であろうと部外者を自社オフィスに招き入れること自体、コロナの感染リスクを高めることに繋がりますからね。
今のご時世、直接顔を合わせて会議をするなんて、どう考えても得策ではありません。
いや、それどころかプロモーター会議をきっかけとしてクラスターが出たともなれば、大正製薬の社内では大問題として扱われるでしょう。
下手をすれば誰かの責任問題として発展しかねません。
詰まるところ、大正製薬としては健康被害だけでなく世間体も踏まえた上での判断なのでしょうね。
ある意味、怖いのはウイルスよりも人間の方だからな!
でも、この展開は大正製薬にとって“渡りに船”だったのではないか…とも思うのです。
先述した通り、大正製薬の人々はプロモーター会議+飲み会について忌避感を持っていたことでしょう。
何とかして、毎年開催されるこの不愉快な風習を断ち切りたい。
しかし、決定打となるような中止理由もない。
そこにきて、コロナ禍によって世界情勢が大きく変化したときた。
大正製薬にとっては、大海で浮木に出会うかのような心境だったのではないでしょうか?
これは後輩MS曰くですが、大正製薬はコロナ禍を理由として卸(私が勤めていた会社)にプロモーター会議+飲み会の中止を申し入れたそうです。
卸の管理職軍団にしても、世情を鑑みて大正製薬からの提案に賛成したみたいですし。
つまり、大正製薬(特に所長)にとっては、これ幸いといった展開となったワケです。
(※とはいえ、鷲友会のノルマが減ったワケではないようですけど。)
MS時代、私があれほど嫌っていたプロモーター会議+飲み会。
それがこうもアッサリと中止になるとは…。
そう考えてみると、コロナ禍が各方面に多大なる影響を与えていることについて改めて実感しました。
まとめ:『鷲友会』のみならずプロモーター会議も“悪習”でしかない!
繰り返しになりますが、私は鷲友会を含めて『詰め込み販売』そのものが業界内での悪習だと思っています。
そして、そこに付随する会議や飲み会などもまた悪習だと思っています。
プロモーター会議と言う割には薄っぺらい内容の打ち合わせ。
卸の人間にタダ飯を食わせるために開催する飲み会。
この一連の流れを悪しき風習と言わず、何と言うでしょうか?
これは一体、いつ、誰が言い出したことなのか?
そもそも、何のために行うのか?
それさえも分からないまま、現場(MRやMS)は上層部からの指示に従っているだけではないのか。
自分の本当の気持ちに蓋をして、渋々と行っているだけでないのか。
鷲友会に関するMS時代の経験を振り返ってみる度に、私にはそのように思えます。
きっと現場の人間は、いや大正製薬の所長ですら“悪習”だと思っているのではないでしょうか?
私が勤めていた卸&エリアに関して、現在はコロナ禍の影響によりプロモーター会議+飲み会が中止状態となっています。
では、コロナ禍が終息したらどうなるでしょうか?
おそらくですけど、プロモーター会議+飲み会の復活について、賛否両論という展開になるんじゃないかと思います。
卸サイドはタダ飯を奢ってもらいたい。
大正製薬サイドはタダ飯を奢るなんて御免被りたい。
こんな構図で卸vs大正製薬のバトルが水面下で行われるような気がします。
これに関して、私個人としては大正製薬を応援したいです。
大正製薬という会社が存在する限り、さすがに鷲友会そのものを廃止することは難しいでしょう。
ならばせめて、この機会にプロモーター会議+飲み会などという悪習は完全に葬ってほしいものです。
コロナ禍による一時的な“中止”ではなく、実利に乏しいモノとして“廃止”を目指してほしい。
元MSとして、そして元大正プロモーターとして、そう願わずにはいられません。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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