こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
皆さんは『オーファンドラッグ』に関するMR活動について、どのようなイメージがありますか?
もしかすると、こんな感じのイメージをお持ちではないでしょうか?
オーファンドラッグは希少疾病患者にとって唯一の治療選択肢でである。
だから医者もオーファンドラッグについては熟知していて、MRが宣伝しなくても薬が勝手に売れていく。
よって、オーファン担当のMRは楽な仕事をしている。
…と思っている方がいるのですが、そんなことはありません!
意外と思うかも知れませんが、オーファンドラッグに詳しい医者は多くありません。
それどころか、オーファンドラッグの適応となる希少疾病自体、医者が詳しく知らないことすらありますからね。
私見ですが、地方に行くほどオーファンドラッグ&希少疾病に関して疎い医者が多いような気がします。
大学病院ですら地方だとこのような状況が散見されます!本当です!
これは地方に行けば行くほど、希少疾病患者が少ないことによる弊害だと考えられます。
患者が少ないことにより、希少疾病を診る機会が乏しくなる。
その結果として、医者にとって希少疾病とは縁遠い存在のように感じられ、興味関心が薄くなってしまう。
そういった意味では、ある意味では医者ですら医療現場にて取り残されている“オーファン(孤児)”のような存在であるとも言えます。
これこそがオーファンドラッグを取り巻いている環境の実態です。
『オーファンドラッグ』とは?製薬会社の現役MRが解説します!
だからこそ、MRが体を張って努力する必要があります。
医師を含む医療従事者たちに、オーファンドラッグの情報を迅速かつ正確に伝えてあげる必要があるのです!
そこで、今回は私(弊社)が扱っているオーファンドラッグに関する仕事について記事にしてみました。
MS時代のヒサシはオーファンドラッグについて誤解していた
私はMSだった頃、複数の病院を担当していました。
…で、当時は病院との契約品目の中にオーファンドラッグが何品目かあったんですよね。
注文頻度は高くないものの、一度注文が来れば数十万~数百万ほどの売上になるような類の薬です。
MSとしては嬉しい反面『これだけの売上が毎月あればMSとして助かるのに…』と思ったものです。
一方で、オーファンドラッグという薬はMRが活動していなくても勝手に売れる薬だと思っていました。
それはなぜか?
希少疾病患者を治療する選択肢は限られている。
ならばオーファンドラッグとは、患者を治療するためには”必ず”使う必要がある。
よって、情報提供や販売促進を行うMRの出る幕はない。
そもそも、自分はMSとして、自社(卸)に来るMRからオーファンドラッグの紹介を受けたことがない。
それはつまり、オーファンドラッグとはMSの力を借りずとも売れる類の薬だから。
さらに言うなら、オーファンドラッグは放っておいても患者に使われる。
製薬会社にとっては苦労せずに売れるボロい商売。
当時の私はこんな風に思っていました。
しかし、この考え方は完全に間違っていました。
オーファンドラッグが放っておいても勝手に売れるなんてとんでもない。
むしろその逆で、MRが努力しなければいつまで経っても医療従事者から知られることがない薬剤。
それがオーファンドラッグの実態です。
私は自分自身がオーファンMRになって初めて、オーファンMRの仕事内容、そしてオーファンドラッグを取り巻く環境というものを知りました。
そのことによって、MS時代がいかに無知だったのかを痛感したのです。
知識として知っているのと、実際に体験するのとでは全く違うのです!
オーファンドラッグの存在はMRの努力によって認知され、そして採用・処方へと至ります。
これは間違いありません。
オーファンMRの使命とは?
個人的な意見ですが、オーファンMRは『病気そのもの』について啓発する必要があると考えています。
例えば、A病という希少疾病があるとします。
では、医療現場においてA病はどのくらい認知されているのか?
実は、一部の専門医以外はA病のことを詳しく知らない…なんてことがザラにあります。
上記の台詞は、実際に私が医者から言われたことです。
大学病院、基幹病院、中小病院、開業医。
程度の差はありますが、私は多くの医療機関でこのようなフレーズを聞きました。
医者とて万能ではありません。
この世の存在する全ての病気について熟知しているワケではないのです。
残念なことですが、これが希少疾病の現実です!
ましてや、希少疾病とは確定診断が難しいものばかりです。
ちょっとした風邪程度の症状が長期間続いていたとして、その症状と希少疾病を結び付けて考えられる医者は多くありません。
でも、ただの風邪だと思われていた患者が実はA病だった…というパターンも存在するのです。
では、A病を知らない医者を相対したとき、オーファンMRはどうするのか?
まず、A病そのものについて情報提供(啓発)するのです。
こんな具合に、まずは希少疾病そのものを医療現場に認知してもらうことが大切です。
オーファンドラッグを売る云々の仕事とは、その次のステップなんですよね。
とにかく、医者の先生方に希少疾病について深く知ってもらう。
これが何よりも大切です。
もし『そんな病気の患者なんてウチにはいないよ』などと言われても、大学病院・基幹病院などの大きな施設であれば、今後もしかしたら希少疾病患者が来院する可能性もあります。
しかし、医者が希少疾病に疎ければ、間違った診断のもとで誤った治療が施されるかもしれません。
それは患者にとっても、そして医者にとっても不幸なことです。
よって、希少疾病についてはMRが根気よく啓発活動を繰り返す必要があるのです!
このような地道な活動が後々、会社と患者に”利益”をもたらすと私は考えています。
患者にとっては治療機会の損失は不幸なこと
先ほど、例え話でA病という希少疾病の話をしました。
私自身の経験談ですが、A病を知らない医者は『A病の治療薬』も知らない可能性大です。
では、A病を知らない医者のもとにA病の患者が来たとします。
その場合、A病の患者はどうなるでしょうか?
自分がA病だと知ることもなく、正体不明の症状に苦しみ続け、その間もA病は進行していき、いくら医者のもとを訪れても適切な治療を受けられない。
医者も『この患者はA病かも?』という発想がないからどうしようもない。
希少疾病の治療においては、このようなことが往々にしてあります。
つまり、患者目線で考えると最適な治療を受ける機会を損失していることになります。
これはとても不幸なことです!!
皆さん、もし自分や自分の家族はこのような状態だったどう思いますか?
私だったら絶対に嫌です。
もし自分がA病だったら、1日でも早くA病だと確定診断してもらいたいです。
そして、A病を治すために1日でも早くA病の治療薬を使って治してほしいです。
こんな風に、医療現場にて希少疾病が正しく認知されなければ、患者側はオーファンドラッグによる治療を受ける機会を失います。
治療を受けられないどころか、そうしている間にも病魔が患者を蝕んでいく。
心身ともに弱り果て、場合によっては生命の危険に陥る。
仮に病気が治癒したとしても、病気で苦しむことによって失った時間は取り戻せない。
そんな不幸を1つでも減らすために、オーファンドラッグ・希少疾病について、MRによる啓発活動が重要になってくるのです。
啓発活動は売上を伸ばすためにも必要である
これも私の経験談ですが、希少疾病に対する医者の意識が変われば、オーファンMRの売上も大きく変わります。
先述したA病も、詳しく検査してみた結果、実はA病だということが判明した…なんてパターンもあるのです。
そういった場面の度に実感するのは、やはりMRによる啓発活動は医者にとって役立っていたということです。
実際、希少疾病の啓発を行っていた病院にて、ある医者からこんなことを言われたことがあります。
ある基幹病院にて、実際に私はこのような事例を経験しました。
その後はトントン拍子で弊社の薬剤が投与され、今では患者さんの症状もかなり改善してきているそうです。
オーファンドラッグを売っていく際、すぐに売上が伸びないこともあります。
しかし、今はオーファンドラッグの適応となる患者がいなくても、数ヵ月後~数年後に適応患者が来る可能性もあります。
その日に備えて、医師陣に対して地道な啓発活動を行い、適応患者が来たら即オーファンドラッグを使って治療してもらう。
こういった地道な活動の積み重ねが、後々で大きな売上に繋がっていきます。
『患者がいない』という医療従事者の言葉を鵜呑みにしてはいけないのです!
もちろん、希少疾病の専門医を担当しているMRならドカンと一気に売れることもあります。
しかし、私の担当エリアは田舎であるせいか、そういったKOLレベルの専門医はいません。
ですから私の場合、オーファンドラッグや希少疾病について情報提供する医者とは、その大多数が非専門医です。
だからこそ、私は1症例ずつ確実に自社のオーファンドラッグを使ってもらうことを念頭に置いてMR活動をしています。
むしろ、MRとしてしっかり活動していないと、オーファンドラッグは医者から認知されることなく埋もれていきますからね。
こんな風に医者から思われてしまったらアウトです。
自社のオーファンドラッグが使われる可能性は限りなくゼロに近いです。
そうならないように、自分が面会した医者には病気と治療薬の両方について情報提供を行うべきなのです。
これは売上のためであり、患者の治療に貢献するというMRの社会的意義のためでもあります。
まとめ:オーファンドラッグとはMRが黙っていたら売れません!
オーファンMRの仕事内容について、多少なりともご理解頂けたでしょうか?
この記事はオーファンMRとしてのマインドを見直すと共に、過去の自分への戒めを込めて書きました。
『過去の自分』とは、記事の序盤で書いた『MS時代の自分』のことです。
医薬品卸のMSとして働いていた頃、私はオーファンドラッグという存在について無知過ぎました。
オーファンドラッグは黙っていても勝手に売れる?
オーファンMRは楽な仕事をしている?
何だったらオーファンドラッグについて情報提供するMRなんて必要ない?
そんな馬鹿なこと、我ながらよくも考えたものだと呆れてしまうくらいです。
もし本当にオーファンドラッグが黙っていても売れるなら、その製薬会社にはMRなんて一切要らないのです。
しかし、現実にはオーファン担当のMRが存在している。
それはつまり、オーファンドラッグはMRがいなければ売れない薬であることの証左です。
そもそも、売る・売らない以前の問題として、希少疾病そのものに関する啓発活動も大切です。
だからこそ、オーファンドラッグを扱うMRとしての勉強だって必要だし、医者やを対象とした説明会だって必要です。
他にはPMSや講演会など、オーファンの仕事には何だかんだでMRが必要な業務も付随しています。
売上的にも、社会的にも、倫理的にも、オーファンドラッグにはMRが必要なのです。
これが実際にオーファンMRの仕事を体験してみた私なりの結論です。
このような充実感を味わえるオーファンMRという職業に巡り合えて、私は本当に良かったと思っています。
最期まで読んで頂き、ありがとうございました!
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