こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
現役NRの皆さんはご存知の通り、コロナ禍によって訪問規制を行う病院が一気に増えましたよね。
開業医であれば、まだ幾らか訪問可能な先がある。
でも、病院への訪問活動は冗談抜きでキツ過ぎる。
2020年のコロナ禍以降、このように主張するMRが大量発生しました。
かくいう私自身もその1人です!
MRとは営業職であり、顧客のもとに訪問してナンボの職業です。
よって、いくらコロナ禍とはいえ手を拱いているワケにもいかない。
では、病院が定めている訪問規制をどうやって突破すれば良いのか?
このテーマを目の前にして、試行錯誤を繰り返しているMRも多いのではないかと思います。
ちなみに、私自身は訪問規制というルールの中で自分に出来ることを模索するタイプです。
直接訪問のためにアポイントが必須なら、そのアポイントを取る方法を考える。
アポイント云々の前に面談自体が不可能なら、電話・メール・手紙などのリモート営業によって活路を開く。
病院側の事情を考慮し、さらにコロナ感染の可能性も加味した上で、相手にとって不愉快であろう訪問は出来るだけ避ける。
決して危険は冒さず、安全かつ堅実にMRとしての業務を行う。
良く言えば慎重で、悪く言うならば臆病。
それがコロナ禍における私の営業スタイルです。
賛否はあるでしょうけど、私にとってはこのやり方が最も性に合っています!
その一方で、訪問規制などお構いなしでガンガン直接訪問を行っているMRもいますよね。
本来なら訪問時にアポイントが必要であっても、“それがどうした”と言わんばかりの勢いでアポなしでの訪問を敢行するMR。
それもまた1つのやり方だとは思うのですが、新型コロナウイルスが流行している社会情勢を考えると、少なくとも物理的・倫理的には誉められた行為ではありません。
実際のところ、コロナの感染拡大リスクを可能な限り避けるため、MRによる直接訪問について自粛を求めている病院は多いですからね。
しかも、病院によっては一度や二度ではなく、幾度となくMRへの訪問自粛を呼び掛けています。
それこそ『ウチの病院に来るのはマジで止めろや!』という怒りと共に警告してくる病院すらあります。
彼らはどのような意図があってMRへの警告を繰り返しているのか?
そこで、病院側が抱えている事情について現役MRとしての視点から考察していこうと思います。
実際に病院から届いた訪問自粛依頼のメッセージ
頻度は異なるものの、Dr.JOYやMONITAROを通じてMRの直接訪問について警告を繰り返す病院たち。
2020年以降、つまりコロナ禍が始まってからは特にその傾向が強まりました。
私の担当エリアは勿論のこと、同僚MRが担当している他エリアでも同じような状況です。
そんな中で、特にMRに対しての糾弾がキツいメッセージを紹介しようと思います。
これは私の担当エリア内にある基幹病院から、Dr.JOYを通じて送られてきたメッセージです。
(※原文そのままではなく、細かい部分の文言は変えています。)
製薬会社 各位
平素よりお世話になっています。
新型コロナウイルス感染拡大への対応のため、以前から皆さまには営業目的での訪問活動について自粛をお願いしておりました。
しかしながら、未だに院内で営業活動している姿が散見されており、問題となっております。
(中略)
当院の上層部より、改めて営業目的での訪問自粛について案内を出すように指示がありました。
新型コロナウイルスによって当院の医療体制にも影響が出ており、決して余裕のある状況ではありません。
(中略)
緊急対応でやむを得ない場合にはアポイントを取っていただき、院内での滞在時間を最短にするようにお願い申し上げます。
いかがでしょうか?
差出人は薬剤部のDIからですが、これを読む限りではMRによる直接訪問についてかなり辟易している印象を受けます。
何と言っても、ご丁寧に“製薬会社 各位”と記載されていますからね。
この辺りの書き方から、他の業者よりもMRのことをより一層警戒しているような節すら感じます。
しかも、このようなメッセージが届いたのは1回きりではありません。
一字一句この通りではありませんが、2ヵ月~3ヶ月おきに同様のメッセージが送られてくるのです!!
多分ですけど、アポイントなしでの訪問活動を行っているMRが後を絶たないからこそ、幾度となくMR宛の警告メッセージが送られてくるのではないでしょうか?
本文中にある『院内で営業活動している姿が散見されており、問題となっております』という一文からも、病院側はアポイントなしでの直接訪問を問題視していることが容易に想像できます。
ある意味、これは製薬会社に対するクレームだからなぁ…
コロナ禍とはいえ、この病院はアポイントさえあればMRによる直接訪問を認めています。
(※ただし、病院側の言葉を借りるなら『緊急対応でやむを得ない場合』のみですけど。)
要するに、アポイントという大義名分を持たずに訪問しているMRが複数いるからこそ、このようなメッセージが定期的に送られてくるのでしょう。
しかし、それでもアポイントなしの直接訪問を止めようとしないMRたち。
病院からすれば迷惑であることこの上ないでしょう。
口を酸っぱくして『来るな』と言っているのに、それでもMRは『来る』のですから。
この記事で紹介している病院だけでなく、私の担当エリア内では他の病院でも似たような事例がありましたし。
不要不急のMR訪問によって基幹病院の薬局長がブチ切れた!この機会に製薬会社の裏側を知って欲しい!
こういった場合、責められるべきはMRの側です。
だって病院側はMRによる直接訪問に対して否定的なワケですからね。
コロナ禍という社会情勢を考えても、病院側の主張は間違いなく正しい。
外部業者による直接訪問を制限することによって人流を減らし、コロナの感染リスクを少しでも抑える。
その積み重ねこそが、患者や医療従事者の健康を守ることへと繋がる。
物理的にも、倫理的にも、こういった考え方は肯定されるべきものです。
その一方で、病院側の意向を無視して直接訪問を繰り返すMRたち。
現役MRである私がこう言うのも妙な話ですが、世間的には決して誉められた行為ではありません。
しかし!!
私自身がMRだからこそよく分かるのですが、MRにはMRなりの辛い事情があるのです。
製薬会社では病院に直接訪問するMRが称賛される
訪問規制が厳しい病院に対して、いかにして直接訪問するか?
これは現役MRであれば知っての通り、製薬会社の社内でも頻繁に議論されるテーマです。
そして、この議論の根底には『規制がキツくても直接訪問できるMRこそが優秀である!』という考え方が存在しています。
その理屈について細かく言語化すると、大体こんな感じでしょうか。
製薬会社であれば多かれ少なかれ、このような考え方が存在しているのではないでしょうか?
このような記事を書いている私自身も、現役のMRとしてそれを肌身で感じています。
病院に直接訪問できるMRは素晴らしい。
医療従事者と直接会ってコミュニケーションしているMRは称賛されるべき。
このような観念が製薬会社の中で渦巻いているのです。
そして、この考え方自体はコロナが流行る前、つまり2019年以前も含めて変わっていないと思っています。
まあ、私個人としては直接訪問によるコミュニケーション自体は否定しません。
電話・メール・手紙でのコミュニケーションよりも、やはり直接会うときの方が相手と効率的に意思疎通できますからね。
“ヒト対ヒト”のコミュニケーションにおいて、これは紛れもない事実です!
しかしながら、直接訪問に拘ることで“見境”がなくなるMRがいるのも事実です。
直接訪問できるMRを善とするなら、直接訪問できない(しない)MRは悪として扱うべき。
流石にこれは極端な例えですけど、製薬会社の中にはこのような価値観に縛られている人間が一定数いるのです。
この価値観の発展形として、直接訪問が称賛されるような社内文化がある。
そんな土壌があるからこそ、何とかしてそれに倣おうとするMRが出てくるんですよね。
直接訪問できるMRは善。
直接訪問できない(しない)MRは悪。
前者はともかく、後者に分類されたMRからしたら肩身が狭いに決まっています。
言い換えるなら、精神的に追い詰められている状態とも表現できます。
実際、MRとしての面会回数を厳しくトレースしてくる製薬会社は多いからなぁ…
人間は追い詰められると冷静さを失う生物です。
もし訪問するに値する理由が思い浮かばないなら、今度は“正当な理由がなくても”訪問することを考え始める。
そして、理に適わないような直接訪問を繰り返すようになる。
これはひとえに、会社(上司)から詰られたくないという一心ゆえの行動なんですよね。
その結果として、病院側の不興を買うような直接訪問が増えてしまうのでしょう。
例えばですが、アポイントなしで病院内を徘徊したりとか。
他には、病院の駐車場で医師を待ち伏せしたりとか。
たとえモラルを欠こうとも、病院への直接訪問を正当化する。
たとえリスクを負ってでも、病院への直接訪問を実行する。
これらの行為について、製薬会社の視点から見れば“勇気ある行動”として称賛されるかもしれません。
その一方で、訪問規制をしている病院側にとっては好ましくない行為ですよね。
ましてや、コロナ禍という世情を考えれば尚更のことです!
感染対策だの、人流抑制だの、対面でのコミュニケーションについて否定的な声が強くなった今のご時世です。
MRの直接訪問について手放しに歓迎するような病院なんて、ゼロとは言わないまでも圧倒的な少数派ではないでしょうか?
もしMRの訪問が発端となってクラスター発生なんて展開にでもなったら、それこそ笑い話にもなりません。
よって、病院側がMRによる直接訪問を警戒するのは至極当然のことなのです。
そのことを知ってか知らずが、直接訪問を繰り返すMRたち。
そして、そんなMRたちを黙認するどころか、場合によっては煽ることさえしている製薬会社。
このように、病院と製薬会社との間には『直接訪問』への価値観について溝があるのです。
その溝はあまりにも大きく、そして深い。
この先、溝が埋まることなんて永久に無いんじゃないかってくらいです。
現役MRとして、そのように思わずにはいられません。
注意:病院側が本気になればMRを潰すことなんて容易い!
病院側が定めた訪問ルールを守らないMRたち。
そんなMRたちへの対策として、病院側はどのようなペナルティを科すのか?
現役MRとして真っ先に思い浮かぶのは“出禁”ですよね。
他には、そのMRの上司または製薬会社の本社にクレーム電話を入れたりとか。
酷い場合だと、そのMRの会社が販売している薬剤を全て競合他社の薬に切り替えたりとか。
この業界でMRとして活動していれば、それなりによく聞く話ですよね。
訪問規制がキツい病院ほど、○○社のMRがペナルティを食らったという噂が絶えないからなぁ…
このようなペナルティを科されたMRは、当然のことながら仕事がやりにくくなります。
医療従事者との面会は叶わず、自社医薬品を紹介するチャンスが完全に絶たれる。
上司から叱責され、同僚から白い目で見られ、社内での居心地が悪くなる。
通常業務が上手くいかない影響で売上は減り、MRとしての評価も下がる一方。
ご覧の通り、MRにとっては嬉しくない展開の目白押しです。
しかし!!!
私個人としては、この程度のダメージで済むならまだマシではないかと思うのです。
突然ですが、皆さんは『建造物侵入罪』という言葉を知っていますか?
刑法130条によると、他人が所有している建造物に正当な理由なく入り込むことで成立する犯罪とされています。
実は2021年の6月、旭川医大の建物に立ち入った新聞記者が建造物侵入罪の疑いで逮捕された事例があります。
(※詳しくは下の記事を見てください!)
MRにとっても他人事ではない!?旭川医科大学への建造物侵入容疑で逮捕された新聞記者について思うこと
この建造物侵入罪と呼ばれる罪状ですが、知れば知るほど恐ろしい内容のように思えてなりません。
例えばですが、訪問規制している病院に対して“強引に”直接訪問したMRの事例について考えてみましょう。
具体的には、入館にはアポイント必須であるにも関わらず、アポイントなしで訪問した状況をイメージしてください。
この場合、MRは病院側の意志に反して“正当な理由なく”訪問している状態です。
少なくとも、病院側からはそのように見做されても文句は言えません。
つまり、法律上では建造物侵入罪の要件を満たしていると考えられます。
あくまで仮定の話ですけど、理由もなく院内でウロウロしているMRのことを病院関係者が発見したとします。
加えて、その病院関係者はMRのことを不快に思い、怒りの赴くまま警察に通報でもしたらどうなるでしょうか?
駆け付けた警察官の性格にも左右されそうですけど、そのMRが現行犯で捕まる可能性はゼロではありません。
良くてその場での厳重注意。
最悪の場合は逮捕。
間を取るなら警察署への任意同行。
予想される展開としては、大体そんなところでしょうか。
もし逮捕なんて展開にでもなったらマジで洒落にならん…
何と言っても、先ほどお伝えした旭川医大の事例もあります。
もし病院側が“その気”になれば、MRを警察に突き出すなんて簡単なことなのです。
…と言っても、流石に警察沙汰にしてまでMR(製薬会社)を罰したいと考えるような病院は稀でしょう。
訪問規制先にて警察のお世話になったMR。
噂レベルの話を含めて、少なくとも私自身は聞いたことがありません。
しかしながら、病院側はMRに痛手を与える方法の1つとして、このように警察を使って追い込む手段を持ち合わせているのは事実です。
これはMRを追い払うという点において、まさに病院側にとっては最終兵器とも呼ぶべきやり方なんですよね。
出来ることなら、そんな最終兵器のターゲットにはされたくないものです。
法律を冒してまで行うべきMR業務など、この世には存在しないのですから。
まとめ:MRの直接訪問について辟易している病院は多い!
直接訪問の在り方を巡って、相反する考え方をしている病院とMR。
極端なことを言えば、これって“被害者”と“加害者”の構図にも見えるんですよね。
訪問規制をしているにも関わらず、悉くそのルールを破られて辟易している病院側は被害者。
病院側の意向なんてお構いなしで、しかもコロナの感染拡大に寄与するような行為すら辞さないMR(製薬会社)は加害者。
さらにタチが悪いのは、MR(製薬会社)の側に“加害者”としての自覚が無いという点でしょうか。
こういった考え方について、MR(製薬会社)の側から見れば確かに“正しい”のでしょう。
この期に及んでアポイントなしでの直接訪問を繰り返すようなMRであれば、そもそも『自分は間違ったことをしている』とすら思っていないかもしれません。
これはある意味、独善的な考え方だとも言えます。
どこからどう見ても、MRにとって都合の良い理屈だけを並べているに過ぎない。
実際問題として、このようなMRの行為について病院側は問題視しているワケですからね。
もうその時点で、MRは“悪者”として病院から認定されてしまうんですよね。
これぞまさに、自覚なき加害者というヤツです。
例えるなら、いじめっ子による『相手の子を苛めている“つもり”はなかった』という主張に近いというか。
自分の側にどのような理屈があるにせよ、相手が嫌がっている時点で、その理屈は既に破綻していると言わざるを得ない。
ましてやMRは営業職であり、病院(顧客)の事情を汲むことなく行動するなんて論外です。
…と、私なんかは考えているのですが、ハッキリ言ってこの件についてはMRによっても考え方が分かれるところだと思います。
この記事で綴った内容自体、どちらかと言うとMRとして慎重派だからこその意見です。
行動派のMRによっては『病院の意向に従うヤツは馬鹿』『MRならリスクを負ってでもガンガン訪問活動するべき』と思うでしょう。
それもまた、MRとしては1つの考え方です。
病院側の心情はともかくとして、MRとしての活動効率だけを考えれば、決して間違ってはいませんからね。
私にとっては釈然としない意見ですし、ハッキリ言って“軽率”だとさえ思いますけど…
MRにとっては何が正しいのか?
MRの目線で重視すべきものは何か?
議論は尽きないところですけど、MRによる直接訪問について辟易している病院が多いのは事実です。
現役のMRとして、その事実だけは忘れてはいけないと思う今日この頃です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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