こんにちは、元MSかつ現役MRのヒサシです。
今回は久しぶりにMRとMSの比較記事を書いてみました。
さて、今回の比較テーマは『雇用の安定感』です。
”雇用の安定感”とは何ぞや?
…というワケで、一旦この記事の趣旨についてお伝えします。
製薬会社にせよ、医薬品卸にせよ、要らない人間にはさっさと辞めてほしいと考えています。
残酷ですが、これが営利組織たる会社の本音です。
雇用する価値ナシと判断した人間に対しては、とことん冷たいのが会社というヤツであり、そこに情けや容赦など存在しません。
そんなとき、MRとMSとでは、どちらがより社内で生き残りやすい(=クビを切られにくい)でしょうか?
製薬会社や医薬品卸にも様々な種類がありますので、一概に言えない部分もありますが…
現在所属している会社に安心して長く勤められるのは、MRとMSのどちらなのか?
会社員として食いっぱぐれにくいのは、果たしてMRなのか?
それともMSか?
一体どっちなんだ!?
…という観点から、MRとMSの雇用について考察してみました。
では早速、私なりの結論を書かせていただきます。
この『雇用の安定感』についてはMSの圧勝だと考えています。
言い換えると、MSの方が社内でのセーフティネットによる恩恵を受けやすいのです。
では、その理由について掘り下げていこうと思います。
MSは他の部署に異動して生きていく道がある!
医薬品卸で働いている人ならご存知の通り、MSから倉庫・事務・配送・企画などへと異動することはザラにあります。
MSから他部署への異動について、栄転なのか、左遷なのか、それは人それぞれです。
(※ですが多くの場合、MSから他部署への異動は左遷であることが大半です。)
ところで、このブログ内でMSから倉庫へと異動した人に関する記事を書いたことがありました。
医薬品卸の倉庫は『MSの墓場』である…という意見について検証してみた。
MS(営業)としての仕事に疲れて倉庫へと異動したがる人間は意外と多い!?
言葉は悪いですが、医薬品卸の倉庫はMSとして芽が出なかった人たちの受け皿という一面があるんですよね。
いや、この場合は『セーフティネット』と呼ぶ方が適切かも知れません。
さて、こういったMS⇒倉庫への異動とは、あくまで医薬品卸内での一例なのですが…
もし会社側が『コイツはMSとして使い物にならない』と判断した場合、そのMSは高確率で異動させられます。
営業成績が極端に悪かったり、複数の取引先から出禁を食らったり、重大なコンプライアンス違反をしたり、MSが他部署へと強制異動させられる理由を考えたらキリがありません。
こんな辞令を受けたMS本人からすれば、心外だと思うことも多いでしょう。
これは即ち、MSとして戦力外通告されたのと同然ですからね。
さらに言うなら、営業畑での出世コースを閉ざされたとの見方も出来ます。
とはいえ、会社目線で考えれば合理的な考え方です。
MSとして適性が無いから、他部署へと異動させる。
単純明快な理屈です。
さて、ここまでの内容だけを見たら、医薬品卸は酷い会社だと思うかも知れませんね。
しかし!!!
これって、実はとても思い遣りのある措置だとも思うのです。
MS(営業職)として使い物にならないと判断された人材に対して、他部署で雇用し続けるって凄く温情的ですよ。
お前はMSとしての適性が無いから即刻クビだ!
…と言い渡すのではなく、
MSとして適性が無いのなら、他部署で頑張ってみると良いよ!
…といった風にチャンスを与えているワケですからね。
少なくとも、すぐにクビを切るような措置ではない。
この一点だけでも、医薬品卸が温情溢れる業種であるように思えてなりません。
確かに、異動に伴うデメリットがゼロというわけではありません。
MS(営業職)だった人間が倉庫・事務・配送へと異動した時点で、基本給や各種手当などが下がってしまうことは避けられませんからね。
しかしながら、路頭に迷わないように雇用が維持されるのも事実です。
詳しくは後述しますが、製薬会社のようにMR(現場の営業)のクビを問答無用で切ってくるほどの残酷さはありません。
そう考えると、MSとして上手くいかなかった人間に対して、他部署での働くチャンスを与えてくれる医薬品卸は、社員に対してとても優しい業種なのではないかと思うワケです。
MRは他部署へと異動することなくリストラされる場合が多い!
現役MRの人であればご存知の通り、製薬会社におけるMRの雇用は厳しい状態が続いています。
MRのみならず、本社勤務の人間ですらリストラされるような時代です。
猫も杓子も、リストラ。
揃いも揃って、リストラ。
実際、Googleで『製薬会社 リストラ』などと検索すれば、色々な会社のリストラ記事が山ほどヒットします。
おいおい、どんだけ人を減らしたがっているんだ!?
…って話ですよね。
でも、これが製薬会社を取り巻いている現実です。
内資・外資を問わず、リストラを断行する会社は後を絶たない。
業界内では優良企業の筆頭格だったアステラス製薬ですら、平成終盤から令和にかけてMR数が半減していますからね。
就活生だった頃から憧れていたアステラス製薬の“栄衰”について語ろうと思う
全く、恐ろしい話です。
こんな記事を書いている私自身も、一介のMRとして戦々恐々としています。(汗)
事情はどうあれ、会社から『コイツはMRとして使い物にならない』と判断された場合、残念ながらリストラ候補となってしまう場合が殆どです。
加えて、この状況でMRの雇用状況に圧力を掛けているのが、MRにとってのキャリアパスの少なさです。
大前提として、もしMRが他の部署に異動するとしたら、どういったポジション候補があるでしょうか?
代表的なものとしては、学術、特約店担当、MSL、マーケティングなどでしょうか。
ご存知の通り、どのポジションも狭き門ですよね。
少なくとも、成績の悪いMRが気軽に異動できるようなポジションではありません。
…と言うか、MRとして大なり小なり好成績を残した人でなければ、異動すること自体叶わないでしょう。
よって、会社側から能力不足のMRと見做されてしまったら最後、そのMRは他部署に異動して生き延びることなく、高確率でリストラ対象となってしまうのです。
あるいは、PIP(業務改善プログラム)を受けさせられて、精神的に追い詰められた挙句、自主的な退職を選ばされるという結末もあり得ます。
何れにせよ、MRとしては歓迎できない展開ですよね。
急遽、数ヶ月後に辞めるようにとの退職勧奨を受け、転職活動もままならないで辞めていく。
すぐに次の職場(転職先)が決まらないようであれば、不本意ながら路頭に迷うだけ。
家族を養っている人ほど、こういった展開となったときのダメージは大きいでしょう。
このように、MRの雇用について安定しているとは言い難いのが実情です。
少なくとも、MSと比べたら不安定だと言わざるを得ません。
確かにMRはMSと比べて、高給かつ休みを取りやすい職業です。
そのこと自体は、私自身が身を以て体験しています。
その一方で、MRとは雇用面での不安が付きまとう職業でもあるのです。
MSとMRの両方を経験した私としては、雇用面においてMRはMSよりも心許ないと感じています。
MR・MSが病気や怪我などで営業畑から外れた場合の処遇
人数としては多くないかも知れませんが、何らかの病気や怪我によって、営業の仕事を継続できなくなる人も一定数います。
心身共に健康で、常に元気に働けるのであれば何も言うことはありません。
しかし、残念ながら何が起こるか分からないのが人生というヤツです。
不慮の事故によって、大怪我を負ってしまう人。
何らかの病気によって、生活に支障が出てしまう人。
MRにせよ、MSにせよ、上記の人たちは身体的な事情により営業として働き続けることは困難です。
では、そういった傷病人となったMRとMSは何処へ行くのか?
これまた私の主観で恐縮ですが…
まず、私自身は傷病人となったMRが他部署に異動して活躍している(あるいは元気に過ごしている)という話を聞いたことがありません。
もちろん、単に私が知らないだけかもですが…(汗)
少なくとも私個人としては、先述したような傷病人となったMRは、いつの間にか辞めていた(=辞めさせられた?)というパターンしか知りません。
一方で、傷病人となったMSについては他部署に異動して、無理のない範囲で働いているという事例を複数知っています。
せっかくの機会ですので、私がMSとして働いていた頃、怪我や病気によって他部署に異動した先輩MSたちについて紹介します。
視力が低下する病気によって運転が困難になり、事務職(デスクワーク)へと異動
腎臓を患い、透析をしながら働き続けるために勤務時間のシフトを組みやすい倉庫へと異動
公私両方のストレスによって顔面麻痺となり、営業の仕事は継続不可能との理由で倉庫へと異動
先輩Aは私が新人MSだったときに指導してくれた人であり、先輩Bと先輩Cは他の営業所で働いていた人たちです。
ご覧の通り、3人とも『MS(営業)として働き続けることは不可能』との理由で異動した人たちです。
こんな風に傷病人に対しても仕事を用意してくれる辺り、医薬品卸内での人員配置は柔軟に行われていることが窺えます。
これもまた、社員目線で考えると一種のセーフティネットですよね。
実際、先述した先輩3人は口を揃えて『病気があるのに働けるのは有難いことだ』と言っていました。
先輩Aに至っては、異動してから数年後には事務職のマネージャー的な役職になっていました。
こんな風に、人によっては異動先で能力を評価される可能性もあるワケです。
このように、怪我や病気で営業畑から外れてしまった人たちに対して、医薬品卸は割と温情的です。
個人的には、製薬会社ほど冷たくはない印象があります。
こうして考えてみると、傷病人となったMRとMSとでは、MSの方が雇用面のセーフティネットに恵まれているのではないでしょうか?
まとめ:『雇用の安定感』についてはMSが勝っている!
昨日と同じように、今日も働く。
今日と変わらず、明日も働く。
言葉にすると何の変哲もないことのように思えますが、実はこれって、社会人にとっては凄く重要なことなんですよね。
そんなあり触れた日常を続けていくためには、安定した雇用が必要です。
そんな雇用の安定感について考えてみると、MRとMSという2つの職業を比較した場合、MSに軍配が上がるというのが私なりの結論です。
待遇面だけを見ればMRはとても恵まれていますが、雇用面も含めて考えてみると、決して万能な職業ではないのです。
ところで、ちょっと話は変わりますが、ネット上ではMSからMRへの転職を煽るような広告や記事などが溢れています。
そういった広告・記事などに対して、私個人としては少しばかり懐疑的なんですよね。
耳障りの良い言葉を並べ、あたかもMSからMRへの転職についてメリットだらけのように謳っている。
正味な話、胡散臭いと思うことすらあります。
この際ですから、MSとMRの両方を経験した人間として、真実をハッキリと言わせていただきましょう。
MSからMRへの転職はメリットがある反面、デメリットも確実に存在しています。
そういった意味では、この記事で触れた雇用云々という点こそ、まさにMSからMRへと転職する際のデメリットであり、隠れたリスクだと思うワケです。
MSを辞めた今だからこそ、MS時代の自分が享受していた“恩恵”を実感しています!
確かにMSは楽な仕事ではないし、精神的なストレスも溜まりやすいです。
昔の私がそうだったように、現役のMSにとって、MRという職業の待遇が眩しく見えるのも無理ないです。
それこそ、何が何でもMRに転職して、経済的に豊かな生活を手に入れようと躍起になっていた時期もあります。
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私はMRに転職したことを後悔しているワケではありません。
なぜなら、MRに転職することで得たものが沢山あるからです。
その反面、失ったものがあるのも事実です。
その“失ったもの”の1つが、この記事で触れた『雇用の安定感』です。
MRへの転職直後は全く気付きませんでしたが、MRとしてのキャリアを積めば積むほど、この雇用に関する現実が重たく感じられるようになってきました。
現役のMSとして働いているうちは中々気付きにくいかもですが、MSがMRよりも恵まれている部分は間違いなく存在しています。
雇用云々はもちろんのこと、転勤の頻度についても然りです。
MSという職業、そして医薬品卸という業種は、決して悪いところばかりではないのです。
よって、人によってはMSとして働き続けることも立派な人生の選択肢だと思うワケです。
ただし!!!
いくらMSはMRよりも雇用が安定しているとはいえ、リストラが一切ないワケではありません。
大手の医薬品卸に関して言えば、令和以降はメディセオとスズケンが大規模なリストラを行っています。
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いくら雇用面でMSがMRより安定していると言っても、リストラと無縁というワケにはいかないのです。
今のご時世、終身雇用などには期待できません。
MRにせよ、MSにせよ、自分が置かれている状況に応じて、柔軟なキャリアプランを描くことが最も大切です。
自分の雇用、そして自分のキャリアは自分自身の力で守っていきましょう!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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