こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
コロナ禍以降、すっかり製薬会社の定番行事となったWEB講演会。
今日も今日とて、どこかの製薬会社がWEB講演会を企画&開催していることでしょう。
私はと言うと、自分で言うのも妙な話ですが、これまでに結構な数のWEB講演会をこなしてきました。
その傍らで、演者&座長との折衝も数多く行ってきました。
そんな中で、ある演者の先生から『サクラ質問』について話を振られた経験があります。
それも、WEB講演会の開始直前に…です。
ヒサシ君、今日は“質問”の準備をしてきたかい?
この一言で、私はピンときました。
ああ、この演者の先生は『製薬会社の人間によるサクラ質問』のことを言っているのだな、と。
現役MRであればご存知の通り、WEB講演会では匿名での質問が可能です。
実名は明かさないように、チャット風の画面に質問文を入力して、あとは投稿ボタンを押す。
それだけで立派なサクラ質問が一丁上がりです。
要するに、視聴者である医師でなくとも、製薬会社の人間が正体を隠して質問投稿できてしまうワケですね。
しかしながら、そんな事を演者の先生の前で肯定できるワケがない。
少なくとも、MRの立場で“Yes”と言うワケにはいかない。
当然ながら、私は白を切りました。
え?“質問”って何のことですか?
今日の講演会は多くの先生方が視聴予定ですので、きっと質問も沢山来ますよ!
…白々しい。
…ああ、白々しい。
そんなことを頭の隅で考えながらも、演者の先生に対して咄嗟にこう答えたヒサシ。
当然ながら、内心ではドキッとしたのは言うまでもありません。
…と言うか、この時は自分で喋っていて『茶番って、こういう事を言うんだろうな…』なんて思ったんですよね。(汗)
その一方で、演者の先生から見れば尚更『こいつ、白々しいヤツだな…』などと思ったことでしょう。
結果論ではありますが、そのWEB講演会では案の定、サクラ質問を行うことになりましたので。
この一件を通じて、私はサクラ質問の是非について、改めて考えさせられました。
医師の中には、WEB講演会のサクラ質問に勘付いている先生がいる。
確証は無くても、製薬会社の人間がサクラとして質問していることを殆ど確信している。
今ではそのように思えて仕方ありません。(汗)
…というワケで、この記事では『WEB講演会におけるサクラ質問』というテーマで色々と綴ってみました。
“質問ゼロ”のWEB講演会はヤバい
そもそもな話ですが、なぜWEB講演会ではサクラ質問が必要なのでしょうか?
今さら言うまでもないことですが、それは“質疑応答の場面で質問がゼロだと良くないから”です。
より正確に言えば“座長・演者の先生方の面子を潰すとマズいから”といった感じでしょうか。
質疑応答の際、質問がゼロ。
それは即ち、視聴者から演者の先生に対して、尋ねたいことが無いという意味です。
当たり前の話ですが、そんな展開でWEB講演会が盛り上がるはずがありません。
ともすれば、お通夜みたいな雰囲気のまま閉会という場合もあり得ます。
これって演者の先生からすれば寂しい限りですよね。
だって、せっかく講演したのに視聴者からの反応が無いワケですから。
WEB講演会ともなれば視聴者の顔が見えない分、演者としては余計に気になる部分なのだと思います!
こういった状況になれば、座長の先生も演者に対して気を遣いますよね。
場合によっては、座長から演者に質問することで、何とかして場を繋ぐような展開もありますし。
大体にして、質問がゼロという時点で、そのWEB講演会の視聴者数は怪しいものです。
下手をしたら、片手で数えられるくらいの人数しか視聴していない可能性も考えられます。
それは巡り巡って『製薬会社の連中が集客をサボったのか?』などと演者&座長に曲解される原因にもなります。
気合を入れて集客したところで、結局のところ視聴者が集まらない場合も多いけど…(汗)
そんなこんなで“質問ゼロ”なんて状況にでもなったら、製薬会社としては大ピンチなんですよね。
演者&座長から叱責され、その場ではひたすら頭を下げるのみ。
そして今度は、社内での責任追及が始まるときた。
集客が悪かったのはMRのせいではないか?
集客のマネジメントが甘かった所長に問題があったのでは?
企画を立てたマーケティング部門が方向性を誤ったのが原因では?
こんな風にして『アイツが悪い、コイツが悪い、自分は悪くない』みたいな醜い論争が始まるワケです。
それが巡り巡って本社vs現場という展開にでもなれば、各方面に遺恨を残すことも少なくありません。
製薬会社の現場と本社との間にある“埋まることのない溝”について語ってみる
当然ながら、こんな事態になったら良いことなんて1つもありません。
皆が気分を害するだけですからね。
こういった“最悪の事態”を回避するために、MRを含む製薬会社の人間たちはどうすれば良いのか?
その問いに対する答えの1つが、サクラ質問というワケです。
WEB講演会を盛況に見せるための『サクラ質問』
この記事の冒頭でお伝えした通り、WEB講演会では匿名で質問することが出来ます。
それこそがWEB講演会における利点の1つであり、なおかつサクラ質問が各社で蔓延している原因でもあります。
…と言うのも、もし仮に視聴者が少ないWEB講演会であっても、匿名でのサクラ質問を連発すれば“まるで盛況であるかのように”見せることが可能です。
早い話、サクラ質問が“舞台装置”として機能するワケですね!
Zoomなどであれば、演者&座長もリアルタイムで質問を見ることが出来ます。
ですが、匿名での質問であれば、質問主の名前までは分かりません。
そして、たとえ匿名であっても“質問”であることに何ら変わりはありません。
当然ながら、演者&座長からすれば対応する義務があります。
その性質を利用して、製薬会社の社員が一WEB講演会の最中にサクラ質問を行うというワケです。
いくらサクラ質問とはいえ、2問、3問、4問と続けば、あたかも“盛況であるかのように”見せることが出来ます。
演者&座長からすれば、面子が潰れることもない。
製薬会社の側からすれば、後から演者&座長に怒られることもない。
そう、WEB講演会の体裁を保ち、各方面において丸く収まるワケです。
WEB講演会にて“誰も恥をかかない展開になる”という効果はデカい!!
もちろん、視聴者が何十人~何百人といるWEB講演会であれば、敢えてサクラ質問を行う必要はありません。
もし本当に盛況なWEB講演会であれば、視聴者の中の誰かが質問を行ってくれますからね。
よって、サクラ質問とは“視聴者が少ない場合に限り行うべき手段”と言えるでしょう。
…と言っても、昨今はWEB講演会が乱立している状況です。
地域や領域によって多少異なるとは思いますが、ハッキリ言ってWEB講演会が開催されない日の方が少ないと思います。
2021年も製薬会社によるWEB講演会の乱立は止まらない!?MR目線での苦悩を語ってみる!
【医者の苦言】製薬会社によるコロナ禍でのWEB講演会について本音を教えてもらった話
今日はA社がWEB講演会を行う。
明日はB社がWEB講演会を行う。
明後日はC社がWEB講演会を行う。
コロナ禍で医師に会えない状況の穴埋めとして、無理矢理にでもWEB講演会を企画する。
そうする事で、医師との接点を増やす。
これが製薬会社の実情であり、そのために各社が血眼になって視聴者数の確保しようとしているのです。
しかしながら、如何せんWEB講演会の数が多過ぎる。
このような状況下で、自社のWEB講演会について視聴者を増やすのは至難の業です。
集客対象である医師の数は限られているワケですから、まあ当然の話ですよね。
…が、MR(製薬会社)としては、何とかしてWEB講演会を成功させないといけない。
もし視聴者が少ない場合であっても、せめて演者&座長の面子を潰すことだけは避けたい。
サクラ質問が蔓延している背景には、このような事情が存在しているというワケです。
WEB講演会にて匿名で質問する医師は少ない
今までの経験上、WEB講演会を視聴している医療従事者(特に医師)が匿名で質問している場面って、あまり見かけたことがありません。
匿名扱いではなく、実名の状態で『○○に関してどう思いますか?』といった質問を演者に対して堂々と投げかける。
そういったパターンが大半であったように思えます。
よほど引っ込み思案なタイプなら話は別ですけど、わざわざ医師が匿名で質問する意味って殆どありませんし。
要するに、マジで盛況なWEB講演会においては、匿名機能を使わずに質問する人の方が多い印象があるワケです。
もしかしたらですけど、匿名で質問する機能自体を知らない先生もいるかも?
そのせいか分かりませんが、匿名での質問が立て込んでくると、演者&座長としては違和感が湧いてくるのかもしれませんね。
いつもなら面識のある医者なり薬剤師なりが、実名でバンバン質問してくるはず。
それなのに、なぜか今日は匿名での質問ばかり。
しかも、よくよく見てみると質問のレベルが妙に低い。
少なくとも、医師が投稿した質問にしてはショボい内容に見える。
こういった数々の要素が、演者&座長に『ああ、これはサクラ質問なんだな』と悟らせるのに一役買っているのでしょうね。
まあ、WEB講演会の1回や2回くらしか引き受けたことがない演者&座長であれば、こういった発想には至らない可能性が高いです。
しかし、何十回というレベルでWEB講演会にて演者&座長を務めている医師であればどうか?
おそらく、彼らはサクラ質問ばかりのWEB講演会について、今までに幾度となく経験していることでしょう。
あるいは、何らかの場面にて製薬会社の人間がサクラで質問している証拠を見てしまったか。
何れにせよ、WEB講演会で引っ張りだこの先生ほど、製薬会社のサクラ質問に勘付いている可能性は高いと言えそうです。
コロナ禍が始まったのは2020年の春頃ですが、そこから既に数年余り。
その数年という期間は、WEB講演会でのサクラ質問が蔓延し、なおかつ演者&座長がサクラ質問の存在を知るには、ぶっちゃけ十分すぎる期間だったのでしょうね。
頭が良いとされる医師にとって、サクラ質問を見抜くなんて簡単なんだろうな…(汗)
最後に:WEB講演会のサクラ質問は“必要悪”か?
MRが頑張って集客し、沢山の視聴者がいれば、WEB講演会は自然と盛況になる。
そうなれば当然、サクラ質問の出番はない。
演者&座長に変な疑念を抱かせることもない。
そして最後には、演者&座長から『今日は良い会になったね!』と言ってもらう。
それがWEB講演会の理想形です。
現役のMRとして、もしこういったWEB講演会が実現できたなら、マジで万々歳です。
しかし、現実はどうでしょうか?
各社がWEB講演会をやりまくっている弊害により、視聴者である医師たちから飽きられている感は否めません。
それどころか、もはや半ば有象無象と化している節すらあります。
それでもWEB講演会を企画してはみたものの、過程も成果も芳しくない場合が殆ど。
いくら集客を頑張っても、視聴者数は微々たるもの。
これで演者への質問が相次ぐなんて、夢のまた夢。
その一方で、上司や本社からは『演者&座長に恥をかかせるな』などと、これまたキツいプレッシャーを掛けられる。
…とまあ、こういった現実に直面しつつも、各社MRは必死で何とかしようと藻掻いているワケです。
かくいう私自身も“藻掻いているMR”の中の1人です!(汗)
しかしながら、何事においても限界というモノはあります。
いくら必死こいて集客してみたところで、蓋を開ければ視聴者がメチャクチャ少なかった。
こういった虚しい展開が起こり得るのが、昨今のWEB講演会なんですよね。
ですが、MRとてサラリーマンです。
たとえ難しい仕事だとしても、知恵を絞ってやり遂げる義務がある。
WEB講演会を企画&運営する以上は、少しでもクオリティが高い会となるように尽力しないといけない。
そして、どんな理由があろうとも、演者&座長の面子を潰すことは許されない。
こういった事情を踏まえて、WEB講演会の最中に実行可能な手段として選ばれるのが『サクラ質問』というワケです。
繰り返しになりますが、サクラ質問なんてやらないに越したことはないです。
少なくとも、私自身は心の底からそう思っています。
自分がMRであることを抜きにしても、決して誉められた行為ではない。
そんなことは百も承知ですが、それでもサクラ質問に頼らざるを得ない場面があるのも事実です。
そう考えてみると、WEB講演会におけるサクラ質問には“必要悪”としての側面があるのかもしれません。
各社によるWEB講演会の乱立状態が続く限り、サクラ質問が飛び交う会も後を絶たないことでしょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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