こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
私が勤めている会社ではオーファンドラッグを複数扱っています。
製品の領域も広く、小児科から内科、外科、その他の診療科まで、結構幅広くカバーしています。
ですが、これまでこのブログ内で、
オーファンドラッグとは何か?
ということについては掘り下げて書いたことがありませんでした。
そこで、今回はオーファンドラッグそのものについて記事にしてみました。
オーファンドラッグの名前の意味とは?
まずは『オーファンドラッグ』という名前の意味からご紹介します。
『オーファン(Orphan)』とは『孤児』という意味です。
『ドラッグ(Drug)』とはその名の通り『薬』という意味です。
これらを略して『OD』と呼ばれることもあります。
一方、薬事法に基づいた正式名称は『希少疾病用医薬品』であり、業界内では普段からこちらの呼び方をする人もいます。
さて、この『オーファン(孤児)』という呼び方には、医療の現場で取り残されているというニュアンスが含まれています。
沢山ある病気の中には、治療法が確立されておらず、そして治療薬も無い、または限られている珍しい病気があります。
そういった希少疾病、及び、その病気を患っている患者は、まさに医療の現場において取り残されているようなものです。
そして何より、希少疾病を患っている患者は人数が少ない。
日本に数十人~数百人しかいないような病気も存在します。
まさに、彼らはオーファン(孤児)のような存在なのです。
『オーファンドラッグ』とは、先述した希少疾病を患っている人々を救うための薬なのです。
オーファンドラッグの条件とは?
この辺りのことはMR認定試験に出ることもあるので、覚えておいて損はないです。
さて、オーファンドラッグとして認められるためには、以下の3つの条件があります。
これらの条件を満たした場合に、厚生労働大臣がその医薬品のことをオーファンドラッグとして指定します。
②に『医療上の必要性』とありますが、具体的には『代替する適切な医薬品等又は治療法がないこと』が条件です。
今まで治療法がなかった病気に対して、この薬が承認されれば、唯一の治療法となる!
こんな状況のとき、②の条件に合致します。
さて、このオーファンドラッグ指定における一連の流れですが、まずは製薬会社側が厚生労働省に申し入れを行うところからスタートします。
その後、疫学的な調査だとか、代替する治療法の有無だとか、色々な審議が行われます。
そして、最終的に厚生労働大臣が、
この薬をオーファンドラッグとして認めます!
と公言するわけです。
オーファンドラッグ指定を受けるのメリットとは?
厚生労働省やPMDAのホームページなどを見て、改めて勉強してみました。
オーファンドラッグは患者からもより必要とされる関係上、色々な優遇措置が存在します。
具体的には、以下のような感じです。
①優先的な治験相談及び優先審査の実施
製薬会社は治験の段取りなどに関して、PMDAと打ち合わせを行う必要があります。
しかし、PMDAの人間も暇ではありませんから、打ち合わせにも優先順位が存在します。
その打ち合わせについて、オーファンドラッグの場合は優先して行われるというわけです。
オーファンドラッグ場合は製薬会社側からの申し込みにより、随時、打ち合わせの日程が決定します。
つまり、日程調整に関しては製薬会社側に主導権があるというわけです。
一方、通常の医薬品の場合は予め決められた受付日、及び、受付時間帯に申し込みする必要があります。
こちらの場合は、日程調整に関してはPMDA側に主導権があるということになります。
こうして見比べてみると、オーファンドラッグが優遇されていることがよく分かります。
②申請手数料の減額
製薬会社が新薬を発売したいときには、何かと申請が必要です。
この薬の治験をさせてください!
この薬の認可をください!
こんな具合に申請を行う際、手数料がかかります。
折角の機会なので、PMDAが公表している資料を色々と調べてみました。
例えば、第Ⅰ相試験開始前の『申請』に必要な手数料は下記の通りです。
・オーファン以外: ¥ 4,239,400
・オーファン: ¥ 3,186,100
普通の医薬品と比べて100万円以上も安いです!
ここまで違うとは私も知りませんでした。
他にも第Ⅱ相試験や製造販売承認申請に関する『相談』についても手数料が必要ですから、最終的には相当な減額になりそうです。
こう考えてみると、オーファンドラッグ指定を受けることの金額的メリットがよく分かります。
③再審査期間の延長
再審査期間については説明がややこしいのですが、取りあえず『後発品が出てくるまでの期間』と考えてください。
通常の新薬(新有効成分配合医薬品)であれば最審査期間は8年ですが、オーファンドラッグの場合は再審査期間が10年まで延長されます。
よって、オーファンドラッグは最低でも10年は後発品が出てきませんので、製薬会社的には長期間販売権を維持できる(売上を確保できる)わけです。
とはいえ、後発品発売には再審査期間だけではなく特許も絡んできますので、オーファンドラッグ発売後10年で後発品が出てくるとは限りません。
④試験研究費への助成金交付
簡単に言うと、製薬会社が公的機関(国)から薬の開発資金をもらえるということです。
PMDAのホームページには、
『指定から承認申請までに必要な試験研究に要する直接経費の2分の1に相当する額を上限』
と記載がありました。
製薬会社目線で考えると助成金があれば自社の懐から出ていくお金が減るわけですから、とても助かる制度です。
⑤税制措置上の優遇措置
これは今回勉強してみて、私も初めて知ったことです。
PMDAのホームページには、
『助成金を除くオーファンドラッグ等の試験研究費総額の12%が税控除の対象』
…と、記載がありました。
MRをやっていると新薬開発に関する税金云々は中々見えにくいものです。
これも製薬会社目線で考えれば、持っていかれる税金はいくらでも低い方が良いわけですから、この制度の存在には助けられているわけです。
オーファンドラッグは患者にとって希望の光です!
ここまでオーファンドラッグに関する制度的なものを中心に紹介してきましたが、次は患者についてのお話です。
皆さんはオーファンドラッグの対象患者がどのような方々かご存知でしょうか?
彼らが患っているのは多くの場合、不治の病です。
遺伝性の病気、生まれつきの病気、ある日突然発症する病気、タイプは様々ですが、こういった難病は基本的に根治することはありません。
根治しないということは、形はどうあれ、その病気と付き合っていかなければなりません。
そういった現実に直面している患者にとって、オーファンドラッグはまさに希望なんです。
患者、及び、患者会も、自分たちを治してくれるオーファンドラッグの誕生を待ち望んでいるのです。
国や製薬会社が少しでも早くオーファンドラッグを世に出そうとする最大の理由はコレです。
患者にとっての希望を生み出すために、色々な優遇措置が存在しているわけです。
MRごときが何を偉そうにと思う方もいるでしょうが、私自身、オーファンドラッグを扱う過程で患者の主治医から感謝されたことは一度や二度ではありません。
『この病気の唯一の治療法はおたくの薬だけだ。医者としても喜ばしいことだ。』
『おたくの薬を使った患者が良くなりつつある。患者も喜んでいるよ。』
医者からこのような言葉を頂戴する度に、私も嬉しく思います。
オーファンドラッグは確実に患者の生命を、さらに言えば人生をも救うことが出来ます。
私自身、MRとしてそのような手応えを実感しています。
まとめ
オーファンドラッグは本当に尊い存在だと思います。
一方で、私はオーファンMRを自称しておきながら、制度面での優遇措置については知らなかった部分も結構ありました。
MRの活動現場では特別必要な知識ではありませんが、オーファンドラッグの成り立ちについて改めて勉強する良い機会になりました。
今後もMRとして、患者志向の仕事を心掛けていきたいと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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