こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
先日、講演会の案内をした部長の先生からクレームをもらってしまいました。
今回案内した講演会は平日の夜、かつ隣県にて開催されます。
ですから、元々その部長の先生に来てもらうのは厳しいと思っていました。
しかし、『案内してみなきゃ分からない!』と勇み足で案内したところ、まさかのクレーム発生。
弊社の薬について採用申請も出してくれた先生だったので結構凹みました。
部長の先生曰くですが、講演会に伴う『弊社の新幹線・ホテル予約の運用方法』が気に食わないとのこと。
まあ、担当MRとしては『そんなこと言われてもなぁ。』という感じでしたが…。
そこで、本日は講演会案内に関するクレームというテーマで記事を書いてみました。
なお、これ以降はクレームを叩きつけてきた部長のことを ” I (アイ)先生 ”と書かせていただきます。
I先生はプライドが高い医者
I先生は私が担当しているエリアの基幹病院にて、ある診療科の部長をしている先生です。
部長という役職であるため、薬の採用、説明会の可否、そして講演会等々、あらゆる場面で影響力を持っています。
そんなI先生ですが、良くも悪くもプライドが高い医者でもあります。
私個人としては、初めて会ったときから一貫して『気難しい医者』という印象です。
今回のクレーム事件においても、元々は17:00のアポイントだったにも関わらず、I先生の都合により医局前の廊下で待たされ続け、結局面会できたのは19:30頃でした。
つまり、私は2時間半も待たされたわけです。
これくらいMRを待たせたら、医者も一言くらいはMRに謝ってくれるものです。
しかし、I先生から謝罪の言葉は一切ありませんでした。
(※別に謝ってほしいとも思いませんでしたし、期待もしていませんでしたが…。)
そして開口一番、
『俺は疲れている。』
『要件があるなら手短に話してくれ。』
…と、言い放ちました。
イメージ的には、医療ドラマに出てくるような高圧的で一癖ある医者みたいな感じです。
決して悪い人ではないのですが、とにかく癖がある。
なおかつ、自分なりの確固たる考えに基づいて診療を行うタイプですね。
そのため、私もそうですが、I先生に対しては他社のMRも『気難しい先生』『付き合いにくい先生』という印象があるようです。
しかし、こういった気難しい医者ほど、一度ハマれば大量に薬を使ってくれたりもします。
実際、私が紹介した医薬品について採用申請を出しただけでなく、現在進行形で積極的に使ってくれています。
(※薬を採用してもらうように説得するのは大変でしたが…。)
そういう意味では、私(MR)にとっても会社にとっても大切な顧客であるわけです。
そんなI先生を含め、その部下の先生方も講演会に呼んでさらに数字を伸ばそうとしていた矢先に、今回のクレーム事件が起こってしまいました。
『I先生の常識』が『私(弊社)の常識』と違いすぎた
記事の冒頭で書いた通り、私はI先生を平日の夜、かつ、隣県での講演会に呼ぼうと考えていました。
しかし、MRの皆さんならご承知の通り、この条件で来てくれる医者は多くありません。
毎日夜遅くまで働いているバリバリの臨床医、しかも部長クラスともなれば多忙を極めます。
講演会では演者・座長共にKOLを呼ぶのですが、だからといってI先生が来てくれるとは限らない。
よって、I先生を講演会に呼ぶのは厳しいと考えていました。
しかし、だからといって何も行動を起こさないのはMRとして良くないことです。
ですから、敢えてI先生には案内をしてみようと踏み切ったのです。
さて、もしI先生が講演会参加を希望する場合、必然的に新幹線やホテル予約が必要になります。
そのため、私としてはI先生の意見を聞いた上で、新幹線・ホテルについて考えるつもりでいました。
これはなぜなのか?
弊社の社内ルールとして、
『新幹線・ホテルを用意できるのは、確実に講演会に来てくれる見込みのある相手のみ』
という決まりがあるからです。
しかし、このルールを前面に出しすぎてしまった結果、I先生からクレームをもらってしまいました。
そのときの私とI先生の会話がこんな感じでした。
ヒサシ『I先生、○月〇日に△△県で講演会を開催するのですが、ご都合いかがでしょうか?』
I先生『あー、遠いし遅い時間だなぁ。多分こりゃ無理だな。』
ヒサシ『そうでしたか…承知しました。』
I先生『でも講演会の内容に興味はある。取りあえず、新幹線の切符とホテル予約を頼むわ。』
ヒサシ『えっ?当日はご来場が難しいというお話では?』
I先生『あぁ、多分行けないだろうけど、もしその日の仕事が早く終わったら行ってみたいってことだよ。』
ヒサシ『は、はあ…。』
I先生『だから、もし急遽その講演会に行けるとなったときのために、新幹線の切符とホテル予約をしておいてくれって言ってるんだ。』
ヒサシ『(いやいや、それでもし講演会に来なかったら、新幹線代とホテル代が 無駄 になるじゃないか!タクシーチケットとは違うんだぞ!)』
I先生『何?どうかした?』
ヒサシ『あの、I先生は講演会当日にご来場いただくのが難しいんですよね…?』
I先生『ああ。9割方、行くのは無理だろうな。』
ヒサシ『(…ってことは、90% の可能性で新幹線代・ホテル代を 捨てる ようなものじゃねーか!そんな経費申請が社内で通るわけがねぇ!)』
I先生『問題でもあるの?講演会に行く・行かないを問わず、新幹線とホテルを用意してくれるよな?』
ヒサシ『あの、I先生。申し上げにくいことなのですが、弊社としては講演会ご来場の確約をいただいた方の分しか新幹線・ホテルのご用意ができないというルールがありまして…。』
I先生『はぁ?何を言ってるんだ?そんな講演会なら、医者なんて誰も行かねーぞ?』
ヒサシ『は、はぁ…。』
I先生『医者は忙しいんだよ。講演会に行けるかどうかなんて、当日になってみなきゃわからないわけ。なのに、その日は確実に講演会に行けるなんて、この場で約束できるワケねーだろ?』
ヒサシ『(やべぇ…。I先生が怒っちゃったよ…。)』
I先生『俺さぁ、20年以上医者をやっているけど、こんなこと言われたのは初めてだわ。他の製薬会社は常に新幹線もホテルも用意してくれるぞ?おたくの会社は何を考えているんだ?』
ヒサシ『I先生、申し訳ございません!では、この件については上司と相談し、なるべくI先生のご希望に沿えるように検討します。ですから、数日ほど猶予をいただけないでしょうか?』
I先生『あぁ、だったら早く検討して回答を持ってきてくれ。おたくの講演会のこと以外にも、俺のスケジュールはどんどん埋まっていくからよ。』
ヒサシ『は、はい!近日中に回答させていただきます!』
I先生『あぁ、わかった。じゃあ俺疲れてるから、今日はもう帰ってくれ。』
ヒサシ『は、はい!それでは、これで失礼いたします!』
いかがでしたでしょうか?
会話の中盤辺りからI先生の表情がメチャクチャ険しくなりました。
ついでに、語気も相当荒かったです。
そんなI先生に、私は完全に気圧されてしまいました。
ただ、今振り返ってみると、馬鹿正直に社内ルールのことまで話したのは明らかな失敗です。
気圧されて冷静さを欠いたとはいえ、あまりにも要領が悪い答え方をしてしまったと反省しています。
結局、新幹線・ホテルの用意はできなかった
I先生との面会の翌日、私はすぐに上司と先輩MRに新幹線・ホテルについて相談しました。
しかし、最終的には『I先生のために新幹線・ホテルの用意はできない』との結論になりました。
理由としては大体こんな感じです。
・来場しない可能性が極めて高い医者のために経費を割けない
・遠方から医者を呼ぶ際、全ての医者のために新幹線・ホテルを用意していたらキリがない(I先生だけ特別扱いにできない)
なるほど、I先生を呼べない(呼ばない)理由として筋は通っています。
ただ、担当MRとしては心苦しいわけです。
I先生に対して『新幹線・ホテルを用意できない』と回答をするのは私です。
この一件でI先生との関係がこじれたままだと、私の売上数字にも影響が出るかも可能性だってあります。
結局、上司との相談後、取り急ぎI先生宛にメールを送りました。
メールの内容は『新幹線・ホテルに関する回答』と『希望に沿えなかった謝罪』です。
それと同時に、直接I先生に会ってお詫びする必要があると考え、すぐに面会アポイントを申請しました。
(※I先生がいる病院は完全アポイント制であり、訪問規制ガチガチの先です。)
それから数日経ちましたが、今のところI先生からメール・アポイント共に返事がありません。
クレームをもらったこと自体もショックですが、”マジで売上が減ってしまったら…” と思うと不安で仕方ありません。
メンタルが凹むのは慣れていますが、数字が凹むことだけは避けたいです。
また週明けから挽回の活動を始めようとは思いますが、今のところMRとしてピンチ状態に陥っています。
MRは『気難しい医者』を避けては通れない
私はMRになってから約4年間、何度も講演会の案内を行ってきました。
そして、これまで案内をした全ての医者が『弊社の新幹線・ホテルの経費事情』について理解を示してくれました。
少なくとも、I先生のようにクレームを叩き付けてくるような医者はいませんでした。
だから、I先生のような気難しい医者といえども、
『しっかりと事情を話せば、製薬会社の経費的な事情を理解してくれるのでは?』
…と、正直甘く考えていました。
しかし、現実はご覧の通りです。
この一件で悪いのは俺なのか?
いや、融通が利かない会社(上司)が悪いのか?
いやいや、I先生が傲慢なだけなのか?
今のところ、自分の中で結論は出ていません。
ただ、凹んでいる私を見かねたのか、ある先輩MRがこんなフォローをしてくれました。
『これは遅かれ早かれ、MRなら誰もが通る道だ。』
『いくらMRが手を尽くしても、医者が納得してくれないことはある。講演会のように金が動くイベントなら尚更だ。』
『I先生のようなタイプの医者はどこにでもいる。他社のMRだって、I先生への対応には手を焼いているはずだ。だから、あまり気にしない方が良い。』
その先輩MRは開業医から大学病院まで、ほとんどの施設の担当経験がある人です。
そういったベテランMRだからなのか、フォローの言葉には説得力がありました。
さらに、先輩MRはI先生のような医者に対して、独自の意見も持っているようです。
『ある意味、製薬会社(MR)が “医者を甘やかした” ことによって、I先生のようなタイプの医者が増えてしまった。』
『自分自身、講演会に来るかどうかも分からない医者相手に、新幹線やホテルの手配をしたことがある。』
『I先生は、これまで製薬会社(MR)に持ち上げられすぎたことによって、それが “当たり前のこと” だと思うようになったのかも知れない。』
製薬会社が医者を甘やかした、という意見は中々斬新だと感じました。
それと同時に、
過去のMR達の行いが、I先生のような『気難しい医者』を生み出したのか?
とも思いました。
I先生は、
『20年医者をやっていて、こんなことを言われたのは初めてだ。』
…と、私に言いました。
これは裏を返せば、各製薬会社が20年以上もの間、” 講演会に来るかどうかも分からないI先生のために新幹線やホテルを用意してきた ” とも捉えられます。
MRと医者との関係や歴史を考えると、意外と根が深い問題なのかも知れませんね。
I先生タイプへの対策
先ほどの先輩MRから、今回のような場合の ” 抜け道的なやり方 ” を教えてもらいました。
具体的には、下記のような感じです。
①:何食わぬ顔で、会社には『この医者は講演会に参加しますよ!』と嘘の報告をする。
↓
②:取りあえず、医者のために新幹線切符やホテルを用意する。
↓
③:講演会当日、もし医者が来なければ『あれ?おかしいですね…。』などと誤魔化す。
↓
④:講演会後、会社には『医者が言うには、急用のため講演会に来れなかったらしいです!』と報告する。
先輩MRも言っていたのですが、コンプライアンス的にもモラル的にも決して褒められたやり方ではありません。
しかし、今後I先生のような『気難しい医者』に出くわしたときのために、一応覚えておいた方が良いと指導されました。
確かに、この通りに実行していれば、I先生からクレームをもらうことはなかったはずです。
ただし、このやり方のリスクとして、上司と同行して講演会に来なかった医者に面会した際、何らかのボロが出る可能性があります。
しかし、こういった 清濁併せ呑むようなやり方 も場合によっては必要なのでしょう。
なるべく実践したくはありませんが、1つのやり方として覚えておきたいと思います。
まとめ:今後も『気難しい医者』とは付き合っていこう
今回は私の要領の悪さと、I先生の気性が悪い意味でかみ合ってしまいました。
しかし、痛い目にあった分、良い勉強にもなりました。
講演会に限ったことではありませんが、MRとして働く以上、今後も『気難しい医者』との付き合いは避けられません。
しかし、MRは数字を伸ばしてナンボな職業です。
そのためには、気難しい・気難しくないに関わらず、あらゆる医者に万遍なくアタックすることも必要です。
逆に、苦手な医者から逃げていたら数字は伸びないでしょう。
…と、こんな風に自分に言い聞かせています。
まあ、正直なことを言うと『気難しい医者』と関わるのは疲れます。
しかし、それもMRの仕事の1つだと割り切るしかありません。
これからも何とか前向きに『気難しい医者』と付き合っていこうと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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